最後の疑問

imgp7812

最近友人は 2ヶ月間タイに行ってきた。

まあ、日本円で千円も出せば一泊できるような安宿に泊まったらしい。

どこの国でもそうなのかも知れないが、やはり日本人旅行者は狙われる。

一応部屋の鍵をロックし、窓の鍵もきちんと閉めた。

タイは湯船に入る習慣がないため、友人はシャワーを浴びていた。

鼻歌交じりで髪を洗っていた時、突然、声が聞こえた。

「あーあーあーあーあーああああああああぁぁぁあああああああああああ」

女の高い声。悲鳴…?さすがに焦った友人。声はすぐ近くで唸っている声だ。

怖い怖い怖い。風呂から出よう。

そう思って、風呂のドアノブを回したとき驚愕した。

下の方に知らぬ誰かの手が挟まっている。女の手。細い指。

友人は発狂寸前になったらしいが、なんとか理性を保ち、思い切りドアを閉めた。思い切り閉めた。

すると、その手はバッと引いて、部屋のドアをバタンと閉める音が聞こえた。

確かに人間である女の声であり、人間である女の手であった。

それでも、その少しはみ出している手を見た瞬間、気がおかしくなりそうになったと言っていた。

フロントに尋ねてみても、知らぬ存ぜぬの一点張り。

「人間だと思う、いや絶対人間だ」

俺には、自分にそう言い聞かせているようにも聞こえたが、何も言わなかった。

そして最後の疑問だけが残った。

なんで、部屋に入ることができたのだろうか…?

関連記事

深夜の研究室

今から数年前に卒論を書いていた頃、私は工学部の学生だったのですが、実験すら終わっておらず連日実験に明け暮れていました。 卒論の締め切りが迫り、実験の合間に卒論を書き、また実験をし…

不倫はダメ

叔母さんが東京で友達とアパート暮らししてた時の話。 友達と服飾を目指し勉強中だった叔母は、友達とも毎日帰宅が深夜だった。 今では珍しくなった木造で、外側にカンカンと音が出る…

ヒサユキ

ヒサユキの記憶 ― 鬼を生んだ女性の話

こんな所でヒサユキの名前に会うとは、実際のところ驚いている。 彼女の事について真相を伝えるのは私としても心苦しいが、だがこの様に詮索を続けさせるのは寧ろ彼女にとっても辛いことだ…

公衆トイレ

いつも

高校生の時、俺は腸が弱かった。故に学校に行く時は少し早く出て、途中の汚い公衆便所で用を足す事が多かった。 その公衆便所は駅を降りて、通学路からは少し外れた所にある森の中にある。 …

いざない

その頃、私は海岸近くの住宅工事を請け負ってました。 季節は7月初旬で、昼休みには海岸で弁当を食うのが日課でした。 初めは一人で食べに行ってましたが、途中から仲良くなった同年…

エレベーターのボタン(フリー写真)

走って来る人影

その日は仕事帰りに買い物のため、自宅近くのショッピングモールに寄りました。 時刻は20時過ぎだったと思います。 そのショッピングモールは、デパートと言うには小さ過ぎる地方の…

何で俺なんだよ

最近体験した怖い出来事です。 文章が堅いのでいまいち怖くないかもしれませんが、洒落にならないくらい怖かったです。 ※ 今年の2月下旬、出張で都内のビジネスホテルに泊まった。 …

森の小屋(フリー写真)

牛の森

俺の地元に『牛の森』と呼ばれる森がある。 森から牛の鳴き声が聞こえるのでそう呼ばれている。 聞こえると言われている、とかそういうレベルじゃない。本当に聞こえる。 俺自…

漫画の並ぶ本棚

ネットカフェの隅で

少し前のことだ。俺は三日間連続でネットカフェを利用していた。 とはいえ、36時間以上の連続利用は禁止されているため、一度強制的に追い出される仕組みになっている。それまで俺は、マ…

赤ちゃんの手

隠された真実

私の母方の祖母は若い頃、産婆として働いていました。彼女は常に「どんな子も小さい時は、まるで天使のようにかわいいもんだ」と言って、その職業の喜びを語ってくれました。祖母は、新生児の無邪…