幽霊ってさ、通り魔みたいに理不尽な存在だと思うんだ

wallpaper341_640_1136

霊ってどんなものかその時まで知らなかったけど、通り魔みたいに理不尽な存在だと思う。

10年くらい前に日本全国をブラブラ旅歩いていたときの話。

T県のとある海鮮料理を出すお店で昼飯を済ませ、当てもなく郊外の広い道路脇を歩いていたら、突然眩暈がして立っていられなくなった。

生ものにあたったのか、吐き気と腹痛が同時に襲ってきて、その場に倒れこんでしまった。

幸い付近の住人らしき人が気付いて様子を見に来てくれたので救急車を手配してもらうことに。

どのくらいの時間を横になったまま待ったのか覚えてないけど、気付くと周りが野次馬だらけ。

恥ずかしさと同時に何かいいようのない違和感を覚えてちょっと不安になった。

担架で運ばれる最中にチラッと横目で見た野次馬の人たちの中に一人だけ雰囲気のおかしな人がいる。

見た目はその辺によくいる五十歳代くらいのクシャクシャパーマ頭のおばさん。

だけど何か変なの。頭が異様に大きくて四頭身くらいにしか見えない。

大きく目を見開いて俺を凝視してるんだけど無表情だった。

救急車に乗せられ、そのまま近くの大きい病院に搬送されて、思ったより大げさな処置を受けたな。

胃の洗浄と尿道カテーテルを突っ込まれたのは人生初体験だった。

症状は単なる軽めの食あたり。

今まで健康しか取り柄が無かったから、精神的なショックで大きく体調を崩したんだろう。

一晩苦しんだけど、翌日には父親が病院に迎えに来てくれて退院できることになった。

父親の運転する車の助手席に乗り込んだときには安心したのか、かなり体調も良くなってきていたけど 、ボンヤリと遠ざかる病院を見ていたら、またあの変なおばさんを見ちゃった。

病院の門扉の前に立って、見開いた目でじっと俺のことを見ていた。

もう怖くて気持ち悪くて、早く家に帰りたい、帰りたいってそればかり頭の中で考えてた。

何が怖いって、おばさんの何を考えているのかまったく読めない表情が生きてる人間らしくなかった。

その後、特に何か大変なことが起きたわけじゃないが、度々あのおばさんを色々な所で見かけた。

最初は怖くて、お寺の住職さんにお経を上げてもらったり、何人か霊能者を名乗る人にも祈祷してもらった。

けど何の効果も無かったな。住職さんはともかく霊能者なんて多分ほとんどインチキなんだろう。

今でも遠くの人ごみの中にあの奇怪なおばさんの姿を見つけたりする。

根拠の無い憶測だけど一定の距離から近づいて来られないんじゃないのかと思う。

最初の担架の上で見て以来、少なくとも50メートル圏内で見たことはない。

オチが無くてスマン。

でも実際理不尽で、簡単には祓われてくれないんだな霊って。

そんな話。

関連記事

旅館(フリー写真)

旅館での恐怖体験

甲府方面にある旅館に泊まった時の話。 俺と彼女が付き合い始めて1年ちょっと経った時に、記念にと思い電車で旅行をした時の事。 特に目的地も決めておらず、ぶらり旅気分で泊まる所…

断崖

断崖の夜髪

私がある旅行雑誌の取材の依頼で、足を運んだのは日本海に面した静謐な観光地でした。 その日、市の観光課に所属する案内人の丁寧な誘導のもと、カメラマンと共に車で取材地を巡りました。…

古い住宅(フリー写真)

きてください

私は編集者をしており、主にイベントや食べ物屋さんなどの紹介記事を書いています。 こちらから掲載をお願いする事もあれば、読者からの情報を参考にしたり、その他お店からハガキやFAX、…

後女

中1の頃の夏でした。 私の祖母の一番上の兄、泰造さんが亡くなりました。 といっても、私は泰造さんとは殆ど面識がなかったのですが、夏休みということもあり、両親と共にお葬式に出…

古民家(フリー写真)

木彫りの仏様

母方の祖母が倒れたという電話があり、家族で帰省した時の話です。 祖母は倒れた日の数日後、うちに遊びに来る予定でした(遠方に住んでいるため滅多に来ません)。 その遊びに来るこ…

おかあさんといっしょの都市伝説 – 2 –

『おかあさんといっしょ』は50年以上続く子ども向けの教育番組だ。 歴史が長いだけに、都市伝説も数多く存在する。今回はその一つをご紹介しよう。 1993年より体操のお兄さんと…

オフィスビルの窓(フリー写真)

落ちるおじさん

先日、大学の同期の友人と久々に食事した時の話。 友人は大阪に出て技術職、私は地元で病院に就職しましたが、勤めている病院は古く、度重なる増改築で構造はぐちゃぐちゃ。 偶に立…

トプン

昨年の秋口、暇だったので札幌の某川上流にある小さなダムに釣りに行った時のこと。 住宅地からさほど離れていない場所にあるので、休日には親子連れも来るのんびりした所なんだけど、その日…

むかえにきたよ

私は高校時代、電車通学をしていました。 利用していたのは、一時間に一本ペース、駅の9割が無人駅という超ド田舎の私鉄です。 二年に上がった春、私が乗る駅で若い親子の飛び降り事…

ホテル

アンケートの忠告

私が某会員制リゾートホテルに勤めていた時、ある老夫婦に書いて頂いたアンケート用紙の内容です。 表面は通常のよくある普通のアンケートの回答でした。ホテルの従業員の対応や施設の使用感…