ジェニー人形

公開日: 洒落にならない怖い話

学校の校門(フリー背景素材)

昔、父親に愛人が居た。

数年後、母にバレて別れる事になったのだが…。

それが原因でその愛人さんは精神的に不安定になり、私や私の姉達の通学路に立って、おかしな言動をするようになった。

姉達は彼女を最初から徹底して無視していたのだが、私は何だか可哀想だったので、当り障りのない受け答えをしていた。

すると「○○ちゃんだけはいい子なのね」と、私にジェニー人形をくれるようになった。

オモチャも服も全てお下がりだった末っ子の私には、古いリカちゃんではない真新しいジェニーがとても嬉しく、内緒で受け取って親に隠していた。

でも愛人さんはこちらの都合も考えずに、尋常ではない数(一度にジェニーハウス・ヘアサロン・ジェニー7体等)を通学路で押し付けてくるようになり、流石に怖くなって彼女を避けるようになった。

彼女の姿を見かけなくなったので、通学路を元に戻したある日の朝。

以前の焦ったような雰囲気ではなく、至って冷静で表情の薄い彼女に遭遇。

つばの大きな帽子を被り、ボストンバッグ2つとオモチャの箱を抱えていた。

「遠くに行かなくちゃならなくなったので、お別れに受け取って」

と、当時は見た事がなかった、黒髪のロングヘアーのジェニーをくれた。

早速学校へ行き、その珍しい黒髪のジェニーを皆に自慢して有頂天になっていたら、男子の一人が奪って箱からむしり出し、首を引っこ抜いてしまった。

そして女子数人がジェニーを男子から取り返してくれた。

そのジェニーの顎下からは、黒い人の髪がぼうぼうにはみ出ていた。

気の強い女子の一人が毛束をつまんだら、最初に固く丸めた毛の塊がポコンと出てきた。

次にゾロゾロととても長い毛が出てきて、頭皮から毛束が連動してゾロゾロゾロゾロと抜けた。

血の混ざった毛根が付いた、切り髪ではなく抜いた毛だった。

囲んでそれを見つめていた一同は、恐ろしくて滅茶苦茶に叫んだ。

気持ち悪くて怖くて、私も皆も悪戯した男子も泣き出してしまい、次の授業が潰れる程の大騒ぎになった。

その日の学級会で、

『○○さんが通学路で “知らない女の人” から貰った人形に、人の毛が詰まっていて怖かった件』

について話し合い、

『知らない人から物を貰わない。変質者には気を付ける』

ということで話がついた。

先生にも母にも父にも『その変質者=父の元愛人』とは言えなかった。

今だにジェニー人形、特に黒い髪のジェニーはまともに見ることも出来ない。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

裏S区(長編)

九州のある地域の話。 仮だが、S区という地域の山を越えた地域の、裏S区って呼ばれている地域の話。 現在では裏とは言わずに「新S区」と呼ばれているが、じいちゃんとばあちゃんは…

田舎で起きた事件

これは実際に起こった事件にまつわる話。 今から15年前、俺は当時10歳だった。 俺の地元は山形県の中でも更に田舎なところで、ご近所さんはみんな親戚みたいなものだった。 …

下心

これは7年ぐらい前の話です。 高校卒業後、就職して初めての一人暮らし。 実家から徒歩30分程度の所で、まったく土地勘がない場所じゃなかった。 一人暮らしを始めて3ヶ月…

悪魔の書

中学生の頃、俺は横浜に住んでたんだけど、親父が教会の神父やってたの。 神父にしては結構ざっくばらんな性格で、結構人気もあったんだ。 まあ、俺なんて信心深い方じゃないし、一家…

巨頭オ

男はふとある村の事を思い出した。 数年前、一人で旅行した時に立ち寄った小さな旅館のある村。 心のこもったもてなしが印象的で、なぜか急に行きたくなった。男は連休に一人で車を走…

顔だけにモザイク

小学校くらいに友達から聞いた話なんだけど、ちょっと思い出したので書いてみる。 ある男を仮にAとさせていただきます。 Aがレンタルビデオ屋でビデオを借りてきて、家に帰って早速…

漫画の並ぶ本棚

ネットカフェの隅で

少し前のことだ。俺は三日間連続でネットカフェを利用していた。 とはいえ、36時間以上の連続利用は禁止されているため、一度強制的に追い出される仕組みになっている。それまで俺は、マ…

田んぼ

蛇田

自分の住んでいる所は田舎の中核都市。 田んぼは無くなっていくけど家はあまり建たず、人口は増えも減りもせず、郊外に大型店は出来るものの駅前の小売店は軒並みシャッターを閉めているよう…

顔文字

オンラインゲームの恐怖体験

一年前の話。友人に誘われて某MMO(オンラインゲーム)を始めた。 それまでネトゲはおろかチャットも未経験だった私は、たまたま大規模ギルドに拾ってもらい、そこの古参プレイヤー数人に…

明け方(フリー写真)

顔の見えない母親

あれはまだ自分が4歳の頃、明け方の4時ぐらいの出来事。 明け方と言ってもまだ辺りは暗く、周りはぼんやりとしか見えない。 ふと気付くと俺はベッドの上に立たされていて、母親に怒…