
ある新婚夫婦が、念願のマイホームを購入するため、不動産屋を訪ねた。
二人は物件を探す中で、少し古いが条件に合った一軒家を見つけた。
和風の造りで趣があり、値段の割にはとても良い家だった。
引っ越し後、新しい生活は順調に始まり、一年ほどが過ぎた。
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その年の夏、妻は家計簿をつけながら、ふと違和感を覚えた。
電気代が異様に高いのだ。
家は風通しが良く、真夏でもクーラーの必要がない。
妻は普段からこまめに電気を消し、節約を心がけていた。
それなのに、請求書に並ぶ数字は、どう見ても使い過ぎの額だった。
妻はすぐに電力会社へ連絡したが、「計算に間違いはありません」と取り合ってもらえない。
やがて、後日職員が直接確認に来ることになった。
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真夏の昼、二人の職員が訪れ、汗を拭いながら家中の電線を調べた。
しかし、異常は見つからない。
妻は納得がいかなかったが、職員が帰り支度を始めたため、しぶしぶ諦めかけた。
その時、もう一人の職員が、茶の間を通る一本のコードに目を留めた。
途中で二股に分かれているのだ。
調べてみると、その先は畳の下へと続いていた。
妻の承諾を得て畳を外すと、コードは床下を通り、さらに土の中へと伸びている。
職員たちは異様な気配を感じ、借りてきたシャベルで掘り始めた。
そして、数分後。
「……なんだこれは」
土の中から現れたのは、古びた冷凍庫だった。
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冷凍庫は茶の間へ引き上げられ、ゆっくりと蓋が開けられた。
中には、全身が氷に閉じ込められた若い女性の裸の死体があった。
長い髪は凍りつき、内壁に張り付いたまま乱れ、瞳は恨めしげに見開かれている。
妻は息を呑み、職員たちは声を失った。
茶の間には、冷気とともに重い沈黙が漂った。
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――もし、あなたの家の電気代が異様に高いと感じたら。
その理由は、思いもよらぬ場所に潜んでいるかもしれない。