した
親父から昔、何度か聞かされた話。
俺が2、3歳の頃、一緒に住んでいた曾祖母が亡くなった。
その頃はまだ、人が死ぬということもよく解っていなかったと思う。
※
その3日後くらいに親父と風呂に入っていたら、俺が突然
「最近、おばあちゃんが階段を上がって寝室に入って来る」
と言い始めたらしい。
最初、親父は曾祖母のことではなく、一緒に住んでいた祖母のことだろうと思っていた。
しかし俺が、
「おおきいばあちゃん(祖母と区別して曾祖母のことをそう呼んでいた)が上がって来る」
と言うので、
「おいおい、こいつ死んだ曾祖母のことを言ってるのかよ」
とゾッとしたそうだ。
しかも、
「どんな風に入って来るの?」
と聞いたら、
「下がしろーくて足が無い。それでこっちを見て笑ってる」
と答えたらしい。
※
この話を親父から聞いた時、当時幼い俺が見えていたものが『足が無い』という一般的な幽霊像と一致していることに、自分でも気味が悪いと思った。
何せ、まだ保育園にも行っていないくらいだからな。お化けのイメージなんて持っていないはずだし、そもそも死というものもよく解っていなかったはず。
※
最近実家に帰った時に、久しぶりにこの話をした。
俺が、
「下が白くて足が無いって言ってたんでしょ?
それって一般的な幽霊像と一致してるよね。小さい頃は見えてたのかもなぁ。自分が怖いわ」
と身振りを交えて話していると、すぐに親父からの訂正が入った。
そしてそれを聞いた俺は、この話について自分が大きな勘違いしていたことに気付くと同時に、改めて当時自分が見ていたものに対して異様な恐怖感を覚えた。
「…いや、『下』じゃなくて『舌』な。真っ白の舌を出してたって」
※
子供向けのどんなキャラクターでも良い。今までに『白い舌』を連想するものを見たことがありますか?
幼い俺が見ていたものはやはり、この世のものから外れたものだったのか…。