幽霊ホテル

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

abandoned_hotel_atagawa253

今から20年近く前の話です。

高校を中退した私は、アルバイト三昧の生活を送っていました。

学力至上主義の進学校に通っていたので、それまでの友人達との縁は完全に切れ、バイト先の仲間達だけが遊び相手でした。

中でも2歳年長のN、同じく2歳年長のK、Kの連れのTの三人とは、色々と馬鹿をやらかしたものです。

そんなある日、Kが隣の県にある某幽霊ホテルに肝試しに行かないかと提案してきたのです。

そこは建設途中で資金繰りの都合で放棄されたホテルで、外観はほぼ出来上がっているものの、一度も開業する事はなく、地元の暴走族や何やらの溜まり場になっているという場所でした。

幽霊ホテルと呼ばれるようになった謂れは複数ありましたが、私達が知っていたのは、暴行され自殺した女性の亡霊が出るとか、リンチされて殺された奴が出るとか、ありがちな話ばかりでした。

現場明けにTに車で迎えに来てもらい、夕食とドライブで時間を潰し、深夜のホテルへと向かったのです。

ホテルは国道に面した場所に建っており、車のライトや街灯のお陰で、拍子抜けするほど普通でした。

がっかりしたような、ほっとしたような何とも言えない気分で、割れた窓から内部に潜入し屋上へと向かったのですが、内装は全く出来ておらず剥き出しのコンクリートのままだった為、生活感というか、リアリティの様な物が感じられず全然怖くありません。

おまけに四人全員、霊感、霊体験共にゼロ。

途中で宴会の跡や、ナニをいたした痕跡を見つけてはワイワイ騒ぎつつ、屋上へと侵入した後は当初の目的を完全に忘れて、ホテル裏の湖を見ながらの酒盛りに突入しました。

2時間程騒いだ後、つまんなかったとか、口々に勝手な事を言いつつ1階まで戻った時、地下へも階段が続いてる事に気付いたのです。

不思議な事に、屋上へと向かう時には地下への階段があるという事に、少なくとも私は気付いておらず、忽然と階段が現れたかのうような不気味な気分をこの時初めて感じました。

他の面々も何かを感じ取ったらしく、躊躇するかのような空気が流れましたが、言いだしっぺのKが降りてみようと提案し、さっさと進んで行ってしまいました。

なし崩し的に皆で階段を降りて行くと通路になっており、足元にはどこから流れ込んで来たのがうっすらと水が溜まっていました。

そのせいか、真夏だというのに肌寒いくらいひんやりとしていたのを覚えています。

これまでと違い、それぞれが持つ懐中電灯の明かりだけを頼りに、通路と扉も付いていない部屋とを見て回っていると、突然今まで感じた事のないような悪寒が背中を走り抜けました。

今でも覚えています。背中の下の方から上に向かって痙攣するかのような、電流が走ったみたいな感じでした。

流石に嫌な予感を覚え、そろそろ帰ろうと言おうとした瞬間、Nが「ケフ」という奇妙な声をあげたのです。

この時の並びはKと私が前列、NとTが後列におり、私が吃驚して振り向くのとNが叫び声を上げながら階段方向に向かって走り出すのがほぼ同時でした。

恥ずかしながら、私も一番肝の座っているKでさえもパニックを起こしてしまい、一目散に階段を駆け上り、車の止めてある場所まで走りました。

その後、なんとかNを落ち着かせ、車に乗り込んで帰路についたのですが、その途中Nが何を見たのか話してくれました。

階段から3つ目の右側の部屋の奥、懐中電灯の光も届かない筈の場所に、はっきりと人の顔が見えたのだそうです。

それも5つか6つか複数がゴチャゴチャに絡まるようにして、のっぺりとした男か女か分からないような顔が…。

それらが一斉に自分を見たと感じた瞬間、ここに居ては危ないという本能のようなものが働いたと言っていました。

結局、その後は全員でファミレスで夜明かしをし、明るくなるのを待って帰路につきました。

その後、同じホテルに肝試しに行った人間と話す機会があったのですが、その人物曰く、地下への階段は完全に水没して降りられなかったそうです。

後日談

幽霊ホテルに行った後も、特に誰にも何も変わった事は起こっていませんでしたので、私が東京に引っ越して彼らと疎遠になって行くと共に記憶が薄れ掛けていたのですが、仕事上の付き合いのある某婦人がなんと、Nの妹さんだったのです。

Nはあのホテルのあった湖で入水自殺をしていました。

自殺の原因は判らないそうです。

関連記事

遊園地(フリー写真)

富士見ランド

私が着ぐるみショーのお仕事を始めて一年が過ぎようとしていた頃です。 アンパンマンのショーで、静岡県の『富士見ランド』という現場へ二泊三日で行くことになりました。 その時の…

窓ガラス(フリー写真)

お通夜を覗く女性

15年程前、不思議な体験をしました。 当時は福井の田舎に住んでおり、高校生の僕は、友人の母親のお通夜へ行きました。 崖崩れか何かの急な事故で亡くなったとのことでした。 …

占い師

昔、姉夫婦と私と彼氏の4人で食事した帰りに『この悪魔!!!』って女性の叫び声が聞こえた。 声のする方向を見ると、路上で占いしてる女性が私に向かって指を差して『悪魔!!悪魔ああああ…

山道

窓側を見てはいけない

ある夜、会社員のAさんは残業で遅くなり、タクシーを拾いました。タクシー内では運転手さんと様々な話題で盛り上がっていました。やがて、タクシーは山の中の暗い道を走り始めました。周囲はうっ…

人が溺れてる

友達から聞いた話。 夏の暑い日の真夜中、仲の良い友達数人で海辺で花火をして遊んでいました。 薄暗い砂浜を、花火を向け合ってわーわー言いながら走り回っていると、友達の一人がい…

カオル

バイト先の会社の寮で、幽霊騒ぎがあった。 俺は入社して1年も経たないのでよく知らなかったが、以前から気味の悪い事が起こっていたらしい。 寮に入っている社員のTさんの部屋が、…

学校(フリー写真)

霊感教師と霊感生徒

俺の母は小学校の教師をしている。 霊感があり、赴任先によっては肉体的にかなりキツかったらしい。 ※ 10年前に4年生のクラスを担任した時、かなりの霊感を持つ女生徒Aと出会った…

紅葉狩り

俺が大学時代の20年以上前の話。 友達がワンボックスの車を買って貰ったとかで、仲の良い女の子達も誘って紅葉狩りに行ったんだ。 山奥で湖があって山道を歩くような所なんだけど、…

携帯電話(フリー素材)

携帯にまつわる話

俺の携帯の番号は「080-xxxx-xxxx」という『080』から始まる番号です。 でも、機種変してすぐは「090-xxxx-xxxx」だと思っていて、彼女にもその『090』から…

パソコン(フリー写真)

朗読する声

実際にあったお話です。 怖い話が好きで、自宅の近所であった自殺の話を、少し脚色してネットで公開したそうです。 その夜、投稿に対する返信を確認していると突然電話が鳴りました…