落ちていた位牌

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

ec5659fefee6d8042b8c7846f9610648

寺の住職から聞いた話。

近隣の村ですが、その村には立派な空家が一つあり、改装の必要なく住めるほど状態が良いものでした。

近頃は都会の人が田舎暮らしを希望するIターンがはやりで、その村も受け入れに力を入れていました。

当然、その家も入居者が入るのですが、三ヶ月と続かず出て行きます。

理由を聞いても答える人は居ません。

とうとう借り手も付かない状態になり、土建屋の寮に貸し出すことになりました。

ところが、入居した土方たちが「出る」と言うのです。

それは白髪まじりの70歳くらいの老婆で、ある人は枕元にカマを持って立っているのを見たり、ある人は白昼、車の荷台で正座しているのを見たり。

最初はみんな自分だけだと思って言いませんでしたが、ある晩4人で寝ていたところ、カマを持って襲い掛かって来たと言うのです。

全員が「見た」ということで、慌てて寮を飛び出したとか。

土建屋の社長・村の担当者は地元の寺の住職に相談しました。

住職は記録を調べ、その家の最後の住人を突き止めました。

享年73歳のお婆さんです。昭和初期に亡くなっているので知る人はいません。

ただ、亡くなった時に遠縁の人が位牌を持ち去ったということは分かりました。

役場で調べましたが、その遠縁の人がどこに居るかは分かりません。

「土葬だから遺骨は無理だが、位牌が他所に行ったのに残ってるのは、何か未練があるのだろう」

住職は社長・担当者と共にその家へ向かいました。

家を一部屋づつ調べ、最後に一番奥まった部屋の押入れに、仏壇が納まっているのを見つけました。

「ギシィ…」

その時、誰かが玄関に上がってきたような音がしたのです。

「振り向くな」

住職は言いながら、仏壇を調べ始めます。

「ギュゥゥシィ…ギュゥゥシィ…」

やがて足音は板の間を通り、部屋に近付いて来ます。

そして、背後の襖が閉まって行く音が聞こえました。

「スー…」

「振り向くな、振り向くな」

住職はそう言って仏壇を調べます。

他の二人は目を閉じました。

畳を踏み、足音が近づいてきます。

「ミシ…ィミシ…ィ」

すぐ後ろまで足音が近付いた時、仏壇の奥に何かが落ち込んでいるのを見つけました。

住職が何とかそれを引っ張り出すと、それは位牌でした。

「フゥフゥフゥフゥ…フゥフッゥフゥ…」

足音が止み、背後から声を押し殺すような息遣いが漏れてきます。

位牌には、男性の名前と、享年、生没年が刻まれていました。

「若いのに、日露戦争で死んだようだな。位牌は寺で預かろう」

そう住職が言うと、足音はゆっくりと部屋を出て行きました。

住職は推測しました。

どうやら位牌はお婆さんの息子のものだったようです。

お婆さんが亡くなった時、自分の位牌は親戚が持って行ってくれたのに、息子の位牌が何らかの理由(落ちて分からなかったのでしょう)で持って行かれなかった。

そのことを不憫に思った婆さんが、死後も息子の位牌を守っていたのだろう。

住職は、親戚が見つかるまで寺で位牌を預かって供養することにしたそうです。

村でも、位牌の引き取り手が見つかるまで、家は誰にも貸さないことにしたそうです。

関連記事

死後の世界への扉

これは母から聞いた話です。 私の曽祖父、つまり母の祖父が亡くなった時のことです。 曽祖父は九十八歳という当時ではかなりの高齢でした。 普段から背筋をぴんと伸ばし、威厳…

廊下(フリー背景素材)

赤いクレヨン

とある夫婦が、非常に安い価格で一軒家を買った。 駅から近くに建っていてなかなか広いので、何一つ不満は無かった。 しかし一つだけ不思議な点があった。 それは、何故かいつ…

ホテル

アンケートの忠告

私が某会員制リゾートホテルに勤めていた時、ある老夫婦に書いて頂いたアンケート用紙の内容です。 表面は通常のよくある普通のアンケートの回答でした。ホテルの従業員の対応や施設の使用感…

笑う女

旅先で知り合ったアニキに聞かせてもらった話。 このアニキが昔、長野と岐阜の県境辺りを旅していた頃、山間の小さな集落を通りかかった。 陽も暮れ掛けて夕焼け空に照らされた小さい…

窓ガラス(フリー写真)

お通夜を覗く女性

15年程前、不思議な体験をしました。 当時は福井の田舎に住んでおり、高校生の僕は、友人の母親のお通夜へ行きました。 崖崩れか何かの急な事故で亡くなったとのことでした。 …

神に愛されるということ

私は占い師に「長生きできんね」と言われたことある。理由も聞いた。 「あんた、大陸に行ったことあるだろう? そこで憑かれたんだと思うけど、悪霊なんてもんじゃない。神に近いから、まず…

北陸本線

二日前だから11月の6日の出来事。終電間近の北陸本線の某無人駅での変な話。 音楽を聴きながら待っていると、列車接近の放送もなく急にホームに列車が現れた。 「うぉっ、時刻表よ…

廃墟

幽霊屋敷

高校を卒業するまで住んでいた街に幽霊屋敷があった。 少し街外れの大きな土地に、広い庭と白い2階建ての家。 2年程前にそれを建てて住んだのは四人家族だった。父親は大学教授。母…

山(フリー写真)

炭鉱跡の亡霊

小学5年生の時に体験した話。 当時は学校が終わってから友達4人で、よく近所の炭鉱跡の山で遊んでいた。 山の中腹の側面に大きな穴が開いていて、覗くと深さは5メートル位だった。…

心霊企業

昔付き合ってた彼女の影響で、視界の端っこの方に本来見えてはいけない人たちが見えるようになってしまった。 最初の頃は錯覚と思い込んでいたが、地元の飲み屋に行った時にトイレの前に体育…