晴れ着

骨董品屋

俺がまだ大学生だった10年前、自称霊感の強い後輩Aと古いリサイクルショップへ行った時の話。

リサイクルショップと言っても、築30年は軽く経っていそうなボロボロの外観で、どちらかと言えば骨董品屋という感じだ。

店の上の看板には「貴金属・骨董品・電化製品・オーディオ」と手書きで書かれており、恐らく骨董品屋からなんでも屋になったのだろう。

元々Aの電子レンジを買うために出掛けていたので、ちょっと覗いてみようと店に入った。

※

俺は霊感なんて全く信じておらず、Aの自称霊能力者も合コンで目立つための嘘だろうと内心馬鹿にしていた。

しかし、そんな俺でも店の中に入った瞬間、違和感というか、何か嫌な予感がした。

あの感覚はあの時初めて味わったもので、上手く言葉で言い表せない。

でも、その嫌悪感の正体はすぐに判った。

とにかく品物が乱雑に並べられ、骨董品と骨董品の間にパソコンが置かれていたり、古書が並んでいる端にブックレスト代わりに皿が置かれていたり、あまりにも規則性が無さ過ぎて気分が悪い。

店主の姿も見えず、「万引きし放題だな」とAに話しかけたがAが居ない。

Aはまだ店先でボーッと上の看板を見ている。

「おい!あったぞ!電子レンジ5000円」

と声をかけたら、やっとAが店の中へ入って来た。

A「やっぱり中古はやめときます…」

俺「まあ、そんな安くもねぇしな、5000円」

その後すぐにAが呟く。

「それに何かいます…ここ」

一瞬ドキッとしたがイライラしてきた。

いかにも出そうな店でお約束の霊感かよと思いながら、

「どこらへんにおるの?」

と聞くと、黙ってAは上を向く。

「上?」

俺も真上を見るが、薄暗い天井と蛍光灯しか見えない。

※

店の奥へ向かうと階段があった。一階が意外と広い事にも気が付いた。

例の乱雑さで、商品棚が3列置いてあった。

俺が階段を昇ろうとした時、Aが小声で

「ヤバい。もう見られてます」

と言った。

『こいつ、俺を怖がらせて喜んでんじゃねーか?』と思いながら階段を昇った。

しかし一段目を昇った時、周りの空気が急にひんやりしているのに気が付いた。

階段を昇る度、何か嫌な予感がしてならない。進むのが躊躇われる。

やっと徐々に2階が見えてきた…。意外と明るい…。

最後は足元に注意しながら一気に昇った。

そして、2階の光景を見て愕然とした。

辺り一面全部着物だ。

それも成人式や結婚式で着るような、派手な晴れ着だった。

ずらりと奥まで、案山子みたく袖に棒を通されて立っている。

奥の着物が揺れたように見え、そちらに目を向けたその時、俺ははっきりと見た。

明らかに敵意を持った目をした女性の顔だった。

揺れた着物の後ろに女性がいる!

俺は急に息が苦しくなった。

吐き気がした。

後ろから階段で昇って来たAが何か言ったが、何を言ったのか解らない。

俺はそこで意識を失った。

※

目が覚めると、Aとおっさんが喋っていた。喋っている内容は解らなかった。

だが自分のいる場所は判った。まだ二階にいる。もう着物の方は見れない。

またパニック寸前になりながら逃げようとするが、上手く立てずに階段の前でコケる。

Aとおっさんが支えてくれてやっと階段を降りる。

すぐに店の前まで出て、排水溝に思い切り吐いた。

真っ白なゲロが排水溝に流れる。

苦しくて苦しくて、このまま気を失って死ぬんじゃないかと思った。

Aが背中をさすりながら「あの目を見ましたよね?」と聞いてきて、また思い出して吐いた。

Aが「吐けるだけ吐いた方がいいっすよ」と言っていたが、俺は妙になるほどと納得した。

Aの言葉通り、一頻り吐くと楽になってきた。

俺「アレが幽霊?」

A「そんなところです。でも、幽霊というよりは怨霊だと思います。店主とも話したけど、あの着物は全部中古だそうです」

俺「もしかしてあの女は前の持ち主か?」

A「そうだと思います。ここからは推論ですが…」

とAが説明してくれた。

※

要するに、晴れ着は成人の祝いや結婚式に親が娘に買ってくれる大事なもので、やむにやまれぬ事情を抱えた女性が質入する場合が多いこと。

その晴れ着に対する未練や、後ろめたい感情が集中する場所だったこと。

俺が見たあの敵意丸出しの目は、晴れ着を見に来る客を遠ざけようとする女性達の目で、俺が店に入った時から見られていたらしいこと。

今もあの顔を思い出すと少し気分が悪くなります。

怖い話・不思議な体験・都市伝説まとめ|ミステリー

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