団地の謎のおばさん

団地

母がまだ幼かった頃、一家で住んでいた団地での不可解な出来事です。

ある日、母と母の姉(私の伯母)が外で遊ぶために家の階段を降りていました。一階の団地の入口に、見知らぬおばさんがいました。

その団地には郵便受けが並ぶ壁の向かい側に共用の手洗い場があり、おばさんはそこで水を流して何かをしていました。しかし、そのおばさんの様子が異様でした。彼女は紺色のモンペを履いており、その頃にはすでにモンペを着る人はほとんどいませんでした。

母が挨拶をしても、おばさんは一切返事をせず、母たちの存在を無視していました。母と伯母は、おばさんの後ろをすり抜けて外に出ようとしましたが、その時、おばさんが無愛想に「もどれ」と言いました。

その瞬間、母はもう一つの異変に気付きました。階段を降りてくる時は、開いているドアから物音や子供の声が聞こえていたはずですが、その時は何の音も聞こえませんでした。

母と伯母が立ちすくんでいると、おばさんが今度はもっと大きな声で「もどれ!!!!」と怒鳴りました。その声に怯えた二人は、手を取り合って四階の自宅まで駆け上がりましたが、途中で見たドアはどれも閉まっていました。

二人が無事に家に戻ると、家の中には何の異変もありませんでした。しかし、その出来事があまりにも不思議で恐ろしいため、伯母と母は大人になるまで一度もその話を口にすることはありませんでした。

母は子供の頃、この話を聞かされて非常に怖かったと言います。そして、「異次元(母はそう表現していました)に行ってしまったら、とにかく元にいた場所に帰りなさい」と、幼い私にしばしば言っていたのです。この話は母から私へ、そして今も私の心に残っています。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

田舎の夜(フリー写真)

田舎の不思議な行事

これは今から約15年前、南伊豆の小さな村で私が実際に体験した、怖いと言うより少し不思議な話です。 小学3年生の夏。私たち家族(父・母・私)は、お盆休みを伊豆のK村という場所で過…

田畑(フリー写真)

尻切れ馬

これは大学生の頃、年末に帰省した時の体験談です。 私の地元はそこそこの田舎で、駅付近こそビルが多く立ち並んでおりますが、少し離れると田畑が多く広がっています。 私の実家も田…

桜の木(フリー素材)

タイムカプセルの手紙

俺の知り合いの超霊感体質の女性(42歳)から聞いた不思議な話。 事の起こりは彼女が中学三年の卒業前まで遡る。 卒業を間近に控えていた彼女のクラスでは、卒業記念にとクラス全員…

玄関

マンデラ効果

これは私が中学生の頃、夏休みを目前に控えた、蒸し暑いある朝の出来事です。 朝食を終え、のんびりと準備を整えて玄関に向かいました。 スニーカーのつま先を土間にとんとんと叩き…

大学の廊下(フリー写真)

鏡に映る私

短い話で、特に面白くも怖くもないかもしれませんが、私が中学生の時に体験した事を話させてください。 私はN県の出身で、私が住んでいる街には地元では少し有名なカトリック系の女子大が…

登校する小学生(フリー写真)

モウキカナイデネ

この話を誰かに話す時、 「確かにその話、滅茶苦茶怖いけど、本当かよ?」 と言われる事がある。 霊が出て来るような話の方が、余程現実味があるからだ。 これは俺が実…

モデルカー(フリー写真)

形見分け

俺はとある物のコレクターなのだが、コレクター友達であるAがある時突然、余命宣告を受けるような大病に罹ってしまった。 もう手の施しようがないレベルで、元気に動いているのが不思議な状…

さっきの子

今年の夏休み、大学の友達と3人で四国へ旅行に行った時の話。 ナビも付いていないオンボロ車で、山中で迷ってしまい、どうにか国道に出る道を探し回っていた。 辺りも薄暗くなってき…

裏世界

不思議な記憶というか、今でも鮮明に覚えている記憶。 小学5年生の夏休み、家の裏手にある大きなグラウンドで、夏休みの自由研究である「身近にいる昆虫リスト」を作っていた。 する…

プラットフォーム(フリー素材)

プラットフォームの死神

小学生の時の事なので思い違いかもしれないけど、謎だった体験。 家族と出掛けた帰り、確か夜の21時頃に、駅のホームで電車を待っていた。 ホームには他にも少数の人が居て、少し離…