知っている子

公開日: 本当にあった怖い話

学校(フリー背景素材)

私の友達Aさんが、小学校6年生の時に体験した話である。

休み時間、彼女は友達と一緒にトイレでお喋りをしていた。

すると突然トイレの入口が開けられ、一人の少女が飛びこんで来た。

知っている子だった。

彼女は咄嗟に掃除用具入れの扉を開け、

「早く、こっち、こっち」

と、少女に用具入れの中に入るよう促した。

彼女と友達は、少女が追いかけっこの末トイレに逃げ込んで来たと思い、かくまおうと思ったのだ。

案の定、少女は迷うこと無く掃除用具入れの中に飛び込んで行った。

彼女たちは、少女のために平静を装い追っ手を待った。

しかしやって来るはずの追っ手は、いつまで経ってもやって来ない。

そのうち悪戯好きのAさんは、少女の入った用具入れの扉に寄りかかり、彼女が中から出られないよう足を踏ん張った。

用具入れの扉はトイレの扉とは反対に、通路側に開けなければ開かない。

そのうち閉じ込められた少女はそれに気付いたのか、中から扉を開けようと内側から凄い力で押し始めた。

彼女は足を突っ張り、扉を開けさせないよう必死に頑張った。

彼女の友達も彼女を手伝い、一緒に扉を押さえた。

「ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!」

突然、少女が激しく扉を叩き始めた。

それは、閉じ込められた少女が中から必死に叩いているものだった。

「ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!」

しかしAさんと友達は怯む事なく、一層足を踏ん張り扉を死守した。

扉は暫くの間、激しく叩かれていたが、そのうち

「ドン!…ドン!…ドン!……ドン!………」

と、次第に扉を叩く力が弱くなり、ついには何の音もしなくなった。

しかし、Aさんはやめることなく踏ん張り続けていた。

「ねぇ、Aちゃん。もう、やめてあげようよ。きっと中で泣いてるよ!」

さっきまで彼女を手伝っていた友達が彼女に言った。

「そうよ!そうよ!可愛そうだから、やめなさいよ!」

と、トイレの中に居た他の女の子たちもそう言い始め、あっと言う前にトイレの中の数人の少女が彼女を取り囲んだ。

こうなると多勢に無勢である。

彼女は仕方が無く、しぶしぶ扉の前から離れた。

しかし、いつまで経っても少女が出て来る気配は無い。

周りの女の子が不安な顔をし、Aさんに扉を開けるよう目配せをした。

「んー。ごめんね。いじけてないで出ておいでよ」

仕方なくAさんは少女に声を掛けながら、用具入れの扉を開けた。

「………………………!!」

用具入れの中には誰も居なかった。

抜け場所などどこにも無いのに、少女はそこから消えていた。

Aさんを含め、トイレの中に居た女の子は全員大パニックに陥った。

この話は全校に広がり、同様の話も他からも出たりするなど大騒ぎになり、この件で全校集会まで開かれる事態となった。

「確かにあの子は知っている子だったけど、彼女の名前や学年、クラスはどうしても思い出せないの…」

と十数年経った今も彼女は言う。

関連記事

高速道路(フリー写真)

中古車と女の子

ある日、夜中の2時頃に友人が家に来て、 「車買ったから、箱根辺りまでドライブに行こう!」 と誘われた。 中古車でカーステレオも付いていないと言うので、自分の部屋からラ…

兄妹(フリー写真)

視える弟

最初に気が付いたのは、私が小学4年生で、弟が小学2年生の時。 一緒にガンダムを見ていたら、普段滅多に口を開かない大人しい弟が不意に後ろを振り返り、 「聞こえない」 と…

襖をひっかく音

僕の親友の小学校時分の話。 今から二十年も前のある日。両親が共働きだった彼は、学校から帰ると一人、居間でテレビを見ていた。 しばらくすると玄関の引き戸が開く音がするので、母…

雪山(フリー写真)

鎖で封印された祠

『牛の首』という江戸時代から伝わる怪談があるが、俺の田舎にもそれに類する伝説があった。 標高200メートルくらいの山があった。山と言うより、丘に近い感じだ。 地元の人たちは…

後悔の念

俺は過去に二度、女の子を中絶させたことがある。一度目は完全に避妊ミス。17歳の若かりしころ。 二度目は、23歳の時。 2年程付き合った彼女なんだけど、俺は結婚を意識してた。…

顔半分の笑顔

僕がまだ子供だったとき、ある晩早くに眠りに就いたことがあった。 リビングルームにいる家族の声を聞きながら、僕はベッドの中から廊下の灯りをボンヤリ見つめていたんだ。 すると突…

U字溝

実家のある地域では、毎月一回くらい集まって地区の道路の掃除とか酒飲んだりする日がある。 んで、その日は昔からありすぎてもう何を奉ってるかも分からない神社だかお寺を掃除する日だった…

爪を食べる女

最近あった喫茶店での話。 普通に時間を潰していたところ、隣のテーブルでなにやら物音。 カリカリカリという音。最初は特に気にもならなかったので本を読んでいたのですが、30分ほ…

さよなら

中学生の頃、一人の女子が数人の女子から虐められていた。 いつも一人で本を読んでいるような子で、髪も前髪を伸ばしっ放しで幽霊女なんて言われていた。 でもさ、その子滅茶苦茶可愛…

夜の公園(フリー素材)

一緒に遊ぼうよ

高校生の頃、彼女と近くの公園で話していたら、5、6歳くらいの男の子が「遊ぼうよー」と言ってきた。 もう夜の20時くらいだったから、「もう暗いから早く帰んなくちゃダメだよ」と彼女が…