黒いワゴン

公開日: 本当にあった怖い話

profile_evo_03

俺の後輩が実際に体験した話です。

後輩たちはその日、数人で暇を持て余しドライブをしていたらしいんです。

車を走らせる内に地元の海にたどり着きました。

時刻は夕方の17時頃。

夏ならいざ知らず、その時季節は秋。

海の駐車場には後輩たちの車以外には2、3台がまばらに駐車してあっただけだったそうです。

後輩たちは「せっかく海に来たんだから砂浜の方へ行ってみよう」ということで、車を停め砂浜の方へ向かったそうです。

何だかんだと砂浜で喋っているうち、すっかり日も暮れ「さすがに腹も減ったし帰るか」ということになりました。

駐車場へ戻ってみると、もう自分たち以外の車は無いかと思われましたが、1台だけ残っていたそうです。

すると、後輩の友達の一人が不思議そうに言ったそうです。

「あの車、俺たちが来た時にも停めてあったよな。まだいたのか」

それに反応して、皆で駐車場の薄暗いライトに照らされた黒いワゴンを見ました。

普段ならこれと言って気にすることでもないのですが、何故かその時はみんな少し様子がおかしいと感じたそうです。

そこで、後輩たちは車に近付いてみることにしました。

近付いて行くと、異変に気付きました。

黒いワゴンのマフラーから運転席の窓に差し込まれた筒のようなもの。

「おい、やばいぞ!!」

すぐに自殺をしているんだと気付いた後輩たちは、皆で車に駆け寄り、窓を覗き込みました。

そこには、既に意識が無いのかぐったりとしている女性と、その息子とみられる男の子がいました。

急いで警察に連絡すると同時に、後輩たちは何とか親子を助けようとしました。

しかし、ドアは開きません。

仕方なく窓を破ろうとするものの、いざ壊そうとしてもなかなか壊れず、なんとか自分たちの車に積んであったスコップを使って窓を破ったそうです。

そうこうしている内にパトカーが到着し、あとは警察に任せることになったそうです。

後日、警察から簡単な表彰をしてもらうという事で、後輩たちは警察署を訪ねたそうです。

その時に警察官から聞いた話らしいのですが、その自殺を図った親子の内、お子さんは既に亡くなっていたらしいのですが、母親だけが一命を取り留めたらしいのです。

しかし母親は自分だけが生き残ってしまい子供だけを殺してしまった事で精神を病み、運ばれた病院で暴れて大変だったらしいです。

更に、自分を助けてくれた後輩たちをも逆恨みしていたらしいのです。

「どうして自分だけ生きているんだ、どうして死なせてくれなかった」

と、騒ぎ立てていたのだそうです。

ただ、とてもすぐには病院から出られる状態でもないし、心配はしなくてもいいと警察官からは言われたらしいです。

その後、その女性がどうなったのかについては、さすがに後輩たちにも分からないそうです。

そんな事件があり、後輩は今でも黒いワゴンを見ると、どうしてもあの母親が乗っていそうな気がしてならないそうです。

関連記事

夜の住宅街(フリー素材)

屋根の上の女

今年の夏の体験。 私の家は山の上の方にある。 夜、喉が渇いたので飲み物を買おうと、500メートルほど坂を下った所にあるコンビニへ行くため自転車に乗った。 私の家からコ…

ハコマワシ(長編)

半年くらい前、怖い体験をした。心霊現象ではないが、かなり気持ち悪い体験だ。長くなると思うから適当に読み流してくれても構わない。 中学生だった頃、俺のクラスに霊感少女がいた。家が神…

木更津古書店

これは自分の体験談という訳ではないんですが…。幽霊やなんかの仕業なのかもよく分かりません。 私も大分絡んではいるんですが、祖母の様子がちょっと変なんです。原因は判っています。一通…

姪っ子に憑依したものは

高校生の夏休み、22時くらいにすぐ近所の友達の家に出かけようとした。 毎日のように夜遅くにそこへ出かけ、朝方帰って来てダラダラしていた。 ある日、結婚している8歳上の姉が2…

自殺団地(長編)

高校時代、俺は10階建ての団地の10階に住んでいた。 その団地は凄く有名で、別名が「ヤンキー団地」とか「自殺団地」とあまり良い名前がついてなかった。 団地は10階建てと13…

生き霊

母の会社の同僚の話。仮に村上さんとします。 村上さんはいつからか、肩こりのようなものに悩まされていた。それまでは、そういった事に悩むような事は全く無かったそうです。 若い時…

部屋の灯り

北海道の知床の近くにある○○という町に友人と行った時のこと。 知床半島の岬を観光するにはその町からバスに乗る必要があったんだけど、田舎なだけにバスが3時間に一本で、面倒臭くなって…

骨董品屋

晴れ着

俺がまだ大学生だった10年前、自称霊感の強い後輩Aと古いリサイクルショップへ行った時の話。 リサイクルショップと言っても、築30年は軽く経っていそうなボロボロの外観で、どちらかと…

夜の池(フリー写真)

夜釣りでの恐怖体験

友人から聞いた話。 彼がヘラブナ釣りに嵌まり始めた頃のこと。 夜中に無性に竿が振りたくなり、山奥のため池へ出掛けたのだという。 餌の準備をしていると、向こう岸に誰かが…

呪われた土地

俺の親友の話をしたいと思う。 小4の頃にそいつ(以下H)の親が二階建ての大きな家を建てた。 建設業を営むHの父親が建てた立派な外観のその家は、当時団地住まいだった俺にとって…