わたしの靴がないの
従姉妹が19歳という若さで交通事故に遭い、亡くなりました。
それから半年ほど経った頃、夢を見ました。
従姉妹の家に沢山の人が訪れ、皆それぞれ食事をしながら談笑しています。
わたしの隣には従姉妹が座り、ずっとお喋りをしていました。
その場に居る誰もが、従姉妹は死んでいる人であると解っている、という内容でした。
※
そろそろ宴もお開きといった頃、従姉妹がすっと立ち上がり、
「わたし、もう帰るね」
と言いました。
帰ると言ってもここは従姉妹の家なのに…と、悲しくなりました。
従姉妹のお母さんも行かないでとは言えずに、涙を堪えて
「行ってらっしゃい」
と言っていました。
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全員が泣きそうになりながら玄関で見送りをしようとすると、従姉妹が突然
「わたしの靴がないの。どこ?」
と言いました。
慌てておばさんが探し出した靴は、泥のような茶色のシミで汚れていました。
靴を履くと従姉妹は悲しそうな顔で振り向き、
「ねえ、わたしどこへ帰ればいいの?」
と言いました。
おばさんは泣きながら空を指差し、
「あっちだよ」
と言いました。
※
朝起きて、この話を母にしました。
母が従姉妹のお母さんにそれを伝えると、
「実は事故の後、どんなに探しても靴が片方見つからなかった。
Uちゃん(わたしのこと)の夢の中でも、履かせてあげられて良かった」
と言っていたそうです。