訪ねて来た友人

公開日: ほんのり怖い話

toyooka_n_03

俺が幼少時に体験した話を一つ。

多分、俺が10歳くらいの時だと思う。

家族5人で飯を食っているときに電話がかかってきた。

最初母さんが出たんだけど、すぐに父さんに電話を代わった。

電話を変わると父さんは顔を険しくさせて、それから悲しそうな顔をした。

電話を終えた父さんは母さんに、

「Aが死んだ。自殺だって」

Aというのは父さんの同級生でそこそこ仲が良かったが、最近借金とアッチ系の人達の所為で首が回らなくなっていたらしく、その末の自殺らしい。

国道の歩道橋から車に向かって飛び降りたらしい。

ほぼ即死だったそうな。

明日は通夜に行かなければと言って、食事を中断したのを覚えてる。

次の日、通夜から戻って家族5人でテレビを視ていた。

ぼーっとしてたから正確な時間は分からないけど、当時は9時に寝かされてたから、それより前だったと思う。

突然ガラガラっと大きな音を立てて玄関が開いたんだ。

田舎のボロ家だったもんだから、玄関は横に引く引き戸。

大分ガタが来ていて開ける時によく引っかかる。それが勢いよく開いたんだ。

その音を聞いて父さんが玄関まで走っていった。

それから玄関先を見て、すぐにサンダルを突っかけて外に出て行った。3分くらいだろうか?

父さんは顔を強張らせて戻ってきた。それから「誰もいなかった」とだけ言った。

俺の家は玄関を出るとすぐに道路があって、向かいは畑。

家の駐車場側には自分の家の小さな畑があって、逆に人の家の畑があった。

畑二つ分くらい離れた所にボロい貸しアパートがある。一言でいうとものすごく見通しがいい。

誰かの悪戯かと思ったけれど、こうも見通しが良いと隠れる場所がまったくない。

しかも父さんはすぐに家から飛び出したわけだから、誰か逃げてたら足音や後ろ姿が見えたはず。

なのに誰もいなかった。

父さんも母さんもその時は何も言わなかった。

ただ俺たちは「今日は早く寝ろ」と言われて寝かしつけられた。

あれは死んだ父さんの友達が最後に挨拶に来たんじゃないかと思ってる。

または、通夜に行ったときに友達を肩に乗せてきちゃったのか。

どちらにせよ、当時子供だった俺はびびりまくりで全然寝れなかった。

それから夜中に時々、何かが廊下を行ったり来たりしてるような音がしばらく聞こえてた。

今は引っ越していて、今日その家を取り壊してきたから思い出ついでに一つ話してみた。

関連記事

アパート

黒い同居人

ある日を境に、私の部屋に“黒い人影”のような存在が棲みつくようになりました。 おそらく、どこかで拾ってきてしまったのか、それとも偶然入り込んでしまったのか――とにかく、それは静…

大きな木(フリー写真)

初恋のお兄さん

小学3年生の頃、当時9歳だった私は、学校で虐めに遭っていました。 幼なじみの友達はいたのですが、一人で過ごす方が楽に感じてきていました。 ※ そんなある夏の日のこと…

優しさを大切に

俺が小学校1年生ぐらいの時の話。 その頃、俺はおとなしくて気の弱い方で、遊ぶのも大体おとなしい気の合う子達とばっかり遊んでいた。 でも何がきっかけだか忘れたけど、ある時に番…

不敬な釣り人の顛末(宮大工11)

とある休日、久しぶりにオオカミ様の社へと参りに出かけた。 途中、酒を買い求めて車を走らせる。 渓流釣りの解禁直後とあって、道には地元・県外ナンバーの四駆が沢山停まっている。…

狐さん(フリー写真)

小さなかぎ裂き

戦後暫く経った頃、地方のある農村での話。 村で一番の旧家の跡取り息子が失踪した。 山狩りをしても、池を浚っても見つからない。 お金か女性がらみのトラブルかと思い、人…

頼もしい親父

親父が若かった頃、就職が決まり新築のアパートを借りたらしい。 バイトしていた材木店のトラックを借り、今まで住んでいたボロアパートから後輩に頼んで引越しをした。 特に大きい物…

お通夜の日

おじいちゃんのお通夜の日の話です 当時高2の俺は、別に手伝う事も無かったので、準備が終わるまで自分の部屋で音楽を聴きながらまったりとしてたんです。 それでちょっと眠くなって…

材木(フリー写真)

合いの手

俺の親父が若い時分に、山から材木を切り出す仕事をしていた頃の話。 飯場と呼ばれる山の中の宿舎で、他の作業員と寝起きを共にする仕事だったそうだ。 その中に民謡のとても上手い…

線路(フリー素材)

北陸の無人駅

昔、北陸の某所に出張に行った時の事。 ビジネスホテルを予約して、そのホテルを基点にお得意様を回る事にした。 最後の所で少し飲んで、その後ホテルに戻る事にした。 ※ ホテ…

田舎の古民家(フリー写真)

4歳年下の妹

私が中学生の時のことです。 夏休みの終わり頃、白い服を着た女の子が頻繁に家の中に現れるようになったのです。 それも昼夜問わず、私が一人の時にばかり現れるのです。 怖…