星を見る少女

公開日: ほんのり怖い話

144004882_624

夜、アパートに住んでいる青年がふと外を見ると、向かいのアパートのベランダに人がいる。

背格好からすると少女だろうか。少女はどうやら、空を見上げているらしかった。

なんとなく窓を開けて空へ目をやると、一面に散りばめられた星々が静かに瞬いている。

少女はこれを眺めているのか、と合点した青年は、何気なく少女に声をかけた。

「綺麗な星空ですね」

突然、アパートの間を冷たい夜風が吹き抜けた。

青年は、風音に声が消されてしまっただろうかと思ったが、少女を見ると、コクりと小さく頷いたようだった。

翌日の夜も、窓の外を見れば、ベランダで少女が空を見上げている。

青年は少女に語りかけるが、少女は黙って頷くだけだ。

無口な子だな、と思いながらも、青年はそんな少女のことが気になり始めていた。

翌日の夜も、少女は空を見上げていた。青年は思い切って尋ねた。

「君と話がしたいから、今からそっちへ行ってもいいかい?」

少女からの返答はない。きっとノーということなのだろう。

青年が諦めかけたその時、夜風が吹き抜けると同時に少女が小さく頷いた。

少女も会ってみたいと思ってくれたに違いない! 青年は込み上げる嬉しさに小躍りしたくなる気持ちを抑えつつ、少女の部屋へと駆け出した。

部屋の前へ着き、青年は緊張しながらチャイムを押した。が、どうやら壊れているらしく、音は出ない。

ドアをノックしてみるが、何の反応も返ってこない。

なにげ無しにドアノブを捻ってみると、鍵はかかっていないようだった。

はたして勝手に入っていいものか。青年は逡巡したが、意を決してドアを開いた。

室内は真っ暗だった。唯一正面に、少女の後ろ姿だけが月明かりに照らし出されていた。

「おじゃまします」

上がり込んだ青年は、少女に声をかけながら歩み寄るが、近づくにつれ違和感を覚えた。

少女の体が少し浮いているのだ。

少女を前にして、青年は腰を抜かしてへたり込んだ。少女は首を吊っていた。

アパートの間を夜風が吹き抜けた。風にあおられた少女の体が揺れ、くくられた首が頷くように小さく折れた。

関連記事

アンティークショップ(フリー写真)

手裏剣と怪異

今から11年前の話です。当時勤務していた会社の先輩で、何となく『そりが合わないな…』と感じる女性がいました。新人だった私には親切にして下さるのですが、どこか裏があるよ…

温泉街(フリー写真)

山宿の怪

先日祖母の法事があり、十数年ぶりに故郷の山奥の町に帰りました。法事の後で宴会があり、そこで遠縁の爺さんに面白い話を聞いたので書いてみます。爺さんはその町から更に車で一時…

今の死んだ人だよな

この4月の第3土曜日のことなんだが、自分は中学校に勤めていて、その日は部活動の指導があって学校に出ていた。その後、午後から職員室で仕事をしていた。その時は男の同僚がもう二人来て…

恐怖のスイカ蹴り

俺の爺ちゃんの終戦直後の体験談。終戦直後のある夏の夜の出来事、仕事で遅くなった爺ちゃんは帰宅途中の踏切にさしかかる。当時は大都市と言っても終戦直後のため、夜になれば街灯…

湖(フリー素材)

白き龍神様(宮大工13)

俺が中学を卒業し、本格的に修行を始めた頃。親方の補助として少し離れた山の頂上にある、湖の畔に立つ社の修繕に出かけた。湖の周りには温泉もあり、俺達は温泉宿に泊まっての仕事…

隣の女子大生

貧相なアパートに暮らす彼の唯一の楽しみは、隣に住む美女と語らうひとときだった。ただ、一つだけ腑に落ちない点が…。当時、彼の住むアパートは、築30年の6畳一間で、おんぼろ…

蜘蛛の巣(フリー画像)

クモ様

我が家は東北の片田舎にある古い一軒家。うちでは昔からクモを大事にする習慣があり、家には沢山のクモが住み着いてクモの巣だらけ。殺すなどもっての外で、大掃除の時もクモの巣を…

雑炊

妻の愛

ようやく笑い飛ばせるようになったんで、俺の死んだ嫁さんの話でも書こうか。嫁は交通事故で死んだ。ドラマみたいな話なんだが、風邪で寝込んでいた俺が夜になって「みかんの缶詰食…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…

公衆電話(フリー写真)

鳴り続ける公衆電話

小学生の時、先生が話してくれた不思議な体験。先生は大学時代、陸上の長距離選手だった。東北から上京し下宿生活を送っていたのだが、大学のグラウンドと下宿が離れていたため、町…