形見の箪笥

公開日: ほんのり怖い話 | 心霊体験

箪笥(フリー写真)

高校時代の英語教師に聞いた話。

解り易い授業と淡々としたユーモアが売りで、あまり生徒と馴れ合う事は無いけれど、なかなか人気のある先生でした。

昔、奥さんが死んだ時(話の枕がこれだったので、そんな事実が初耳だった我々はその時点で相当ビビリ気味だったのですが)、彼はよく不思議な幻を見たそうです。

それは、もう使う人の無い奥さん用の箪笥の引き出しが開き、そこから奥さんが頭半分を出して、ベッドに寝ている先生を見ているというものでした。

彼は『ああ、家族の死で私は精神的に不安定になっているのだな』と病院へ行き、精神科などに相談し薬などを出してもらいました。

そしてなるべく疲れないよう、ストレスを溜めないようにしてみましたが、奥さんは相変わらず夜になると箪笥の引き出しから姿を現し、微妙なポージングで彼を見ていたそうです。

精神的なものでないのなら、現実に起こっている事だと判断した先生。

ある時、その箪笥の引き出しに体を入れ、全身でガタガタ揺すりながら、長い時間をかけて引き出しを閉めてしまったそうです。

そこで長いこと待っていると、「あら」とか何とか、奥さんの声がしたそうです。

思えばリアクションを用意していた訳ではない先生(「冷静なつもりが、やはり動揺していたんですね」とか言っていました)。

困っていると、奥さんが「あなたは太っているから、ここじゃ無理よ」などと言います。

先生もそうだなあと思い、また引き出しをガタガタ揺すって出たそうです。

ちなみにその箪笥はまだ先生の家にあり、疲れた時などに、奥さんが登場しているのが寝入りばな見えるとの事でした。

先生はこの話の締めに、

「私は大丈夫だったけれど、気弱な人だったら『引き出しに入ったまま死んでも良い』と思ってしまうかもしれない居心地の良さでした」

と、淡々と語っていました……。

まだ箪笥をお持ちという事が自分的にほんのり。

関連記事

自衛隊での体験談

ちょっと専門用語が多いので分かり難いかもしれない。 高校卒業後すぐに自衛隊に入隊した俺だったんだが、7月の後期教育のある日、駐屯地にある小さい資料館の掃除があったんだ。 班…

古民家(フリー写真)

庭にあるお墓

そんなに怖くないかもしれませんが、私の体験談です。 埼玉県のとある地域に住んでいるのですが、何代も前から住んでいる人たちの間に、ある習慣があります。 それにまつわるお話です…

海(フリー写真)

赤旗が出る日

地元は海の前の漁師町(太平洋側)の話。 ここ数年は少なくなったが、幼少の頃から海女さんの真似事をしてアワビやサザエを採ったり、釣りをするのが子供の遊びだった。 朝に堤防まで…

おまえこそ

自分が大学生の時の話。マジで思い出したくない。 自分が学生の時の友達にA君という奴がいた。A君には中学くらいの時から付き合ってるBさんという彼女がいて、いつもどこに行くにも一緒っ…

深夜の研究室

今から数年前に卒論を書いていた頃、私は工学部の学生だったのですが、実験すら終わっておらず連日実験に明け暮れていました。 卒論の締め切りが迫り、実験の合間に卒論を書き、また実験をし…

林(フリー写真)

墓地に居た女性

霊感ゼロのはずの嫁が、5歳の頃に体験した話。 嫁の実家の墓はえらい沢山ある上に、あまり区画整理がされておらず、古い墓が寺の本堂側や林の中などにもある。 今は多少綺麗に並んで…

街のショップ

開かない自動ドア

大学二年生の夏休みが近づいた頃、私に不思議なことが起こり始めた。 突如、コンビニやスーパーなどの自動ドアが私に反応しなくなったのだ。 以前は普通に使えていたコンビニの自動…

今日でお別れかな

もう10年以上前の話だが、とある県の24時間サウナで意気投合した男の話。 結婚を考えていた女性がいた。 ある日の晩、一緒に繁華街で遅い晩飯を済ませ軽く呑んだ後、彼女をタクシ…

オフィスビルの窓(フリー写真)

落ちるおじさん

先日、大学の同期の友人と久々に食事した時の話。 友人は大阪に出て技術職、私は地元で病院に就職しましたが、勤めている病院は古く、度重なる増改築で構造はぐちゃぐちゃ。 偶に立…

古いキーボード

あの世からの最後のメール

この話は7年前の出来事です。 当時、インターネットはまだ普及しておらず、私はパソコン通信を利用していました。 クローズドの掲示板のような場所で仲良くなった人たちと、オフラ…