夏の夜の謎

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

夜の海

海岸線に位置する親族の家で過ごした夏の夜の出来事です。

夏の季節にもかかわらず、家の子どもが喘息を持っていたため、蚊取り線香は避け、私のために蚊帳が用意されました。

深夜、暑さと湿気で寝苦しさに襲われ、目が覚めてしまいました。爽やかな夜風を求めて、縁側を出て外の世界へと足を踏み出しました。

心に少しの不安を感じつつも、網戸を閉じてカーテンを引き、涼を求めて海辺へと散歩に出かけました。

昼間はすぐに辿り着いた海岸が、不思議と遠く感じられました。夜の光の少ない中で、道端の家並みは圧迫感を増し、息苦しさを強めていました。

ようやく目的の海岸にたどり着き、砂浜へと足を踏み入れたその時、潮が満ちてきており、足元は生温かく潮の水に濡れていました。

そして、ふと気づくとサンダルが手元にありませんでした。

恐怖を感じて急いで家へ戻ると、不思議なことにすぐに到着しました。

すると閉じていたはずのカーテンが開き、中の蚊帳にはもう一人の「自分」が横たわっていました。

怒りを覚えながらその姿を見下ろすと、目の前の自分自身がいました。

驚きと共に意識が鮮明になり、現実へと戻りました。蚊帳の外を見ると、縁側から畳の上にかけて砂まみれの足跡が残されていました。

しかし布団から足を出してみると、それは一切汚れていなかったのです。

私のサンダルは跡形もなく消えていました。

関連記事

廃墟

廃屋の歯の謎

高校生の頃の話です。実家で犬を飼っていました。弟が拾ってきた雑種犬です。 その犬を2年ほど飼っていると、家族の一員のように感じるようになり、私も時々散歩に連れていました。 …

わたしはここにいるよ

俺が小学生の頃の話。 俺が住んでいた町に廃墟があった。 2階建てのアパートみたいな建物で、壁がコンクリートでできていた。 ガラスがほとんど割れていて、壁も汚れてボロボ…

不思議な森

昔住んでた家の近くの河川敷に広い公園があり、そこに小さな森があった。その森の中には、異常に暗い空間が何カ所かあって、よくそこで遊んでた。 もう少し説明すると、その空間だけ切り取っ…

わかったかな?

多分、幼稚園の頃だと思う。 NHK教育テレビで、人形とおじさんが出てくる番組を見ていた。 おじさんが 「どう?わかったかな?」 と言ったので、TVの前で …

変わった妹

高校生の頃、いつも喧嘩してた妹がいた。喧嘩といって他愛もない口喧嘩で、ある程度言い合ったらどちらかが自然と引く。 ニュースであるような殺傷事件には到底至らないような、軽い喧嘩だっ…

廃ホテル(フリー写真)

廃ホテルでの肝試し

学生時代の夏、男4人と女1人の計5人で、とあるホテルの廃屋へ肝試しに行った。 そのホテルの場所は別荘地のような、周りを森に囲まれた場所に建っていたので、夜23時過ぎに着いた頃には…

金縛り中の他者的視点

以前、一度だけどうにも奇妙な体験をしたことがある。 金縛りというものは多くの人が経験してると思うが、あれは脳の錯覚だ。 本当は寝ているだけなのに、起きていると脳が勘違いをし…

刀(フリー素材)

霊刀の妖精(宮大工15)

俺と沙織の結婚式の時。 早くに父を亡くした俺と母を助け、とても力になってくれた叔父貴と久し振りに会う事ができた。 叔父貴は既に八十を超える高齢だが、山仕事と拳法で鍛えている…

和室(フリー写真)

あき様

私の家は代々旅館を営んでおり、大きな旅館のため私が幼少の頃も両親共に忙しく、会話をした記憶も殆どありませんでした。 店の者が毎日学園まで迎えに来るので、学友と遊びに行く事も出来ず…

お婆ちゃんの手(フリー素材)

牛の貯金箱

小学生の頃、両親が共働きで鍵っ子だった俺は、学校から帰ると近所のおばあちゃんの家に入り浸っていた。 血縁者ではないが、一人暮らしのばあちゃんは俺にとても良くしてくれたのを覚えてい…