欅の木のお地蔵さん

公開日: ほんのり怖い話

欅(フリー写真)

小学生だった頃に体験した話です。

当時は夏休みや冬休みといった長い休みになると、従兄弟達の家に何日も泊りがけで行ったり来たりしていた。

夏休み前半を従兄弟達が私の家で過ごし、後半に私が従兄弟達の家に泊まりに行った時の事。

従兄弟達の家は周りが林で、広い庭に何本も欅の木が植えてあるような田舎の広い家だった。

従兄弟達は5人。私を含めると6人にもなる。

我々は田舎の子供らしく、かくれんぼや缶けり、魚釣りなどで一日の大半を過ごし、それこそ暗くなるまで遊びまくる毎日だった。

泊まっていたのは5日間ほど。

その間は『あなたの知らない世界』や『24時間テレビ』の手塚アニメを見た気がする。

一つ気になったのは、窓から見える欅の木の遥か高い所、屋根のてっぺんに近かったから7、8メートル位か。

太い幹から最初に枝分かれした所に、何故かお地蔵さんがちょこんと乗っている事だった。

石で出来ているのか木で出来てるのかは判別できなかったが、木と同じような色をしていた。

置かれている場所さえ気にしなかったら、極普通の顔をして、極普通の格好をした、やや小ぶりの当たり前のお地蔵さんだった。

毎日見る度、

『どうやって置いたのかな? はしごを繋げたのかな? 木登りして置いたのかな?

それとも木がまだ小さかった頃に置いたのが段々大きくなってあんな高い所に行っちゃったのかな?

でも、あんな高い所じゃお供えとか出来ないよな…』

などと子供らしい空想を膨らませたりしていたが、一旦目を離すと途端に遊びに夢中になり、すぐさま忘れる毎日だった。

ただそれだけで、何故か木の上にお地蔵さんが乗せてあったというだけの話なのだが、帰る時に急に思い出し、傍に居た伯母さんに聞いてみた。

「何であんな木の上に、お地蔵さんが置いてあんの?」

「はあ? お地蔵さん? どこ、どこ?」

そのうち従兄弟達もやって来て、

「あー? 木の上にお地蔵さん? 夢でも見たんじゃねーの? あはははは」

最初は指差して説明していた私だが、ハッと嫌なものを感じ、ごにょごにょ誤魔化し、尻すぼみになって説明を引っ込めてしまった。

散々見ていたお地蔵さんが急に怖くなり、目を伏せると二度と木の方を向かなかった。

そのままお地蔵さんのいる木を見ずに帰り、その後泊まりに行く事は無くなった。

今では従兄弟達は家を出て独立しているため、滅多にその家に行く事は無くなったが、偶に行く用事があるときは少し緊張する。

あの木はまだあるのだろうか?

家(フリー写真)

下に誰か来ている

うちの家は親父が製麺業を経営していて、親父は仕事上、朝の4時になると家を出て行く。 両親の部屋は1階、俺の部屋は2階にあった。 俺が中学生だった時のある日のこと。 …

見覚えのある手

10年前の話だが、俺が尊敬している先輩の話をしようと思う。 当時、クライミングを始めて夢中になっていた俺に、先輩が最初に教えてくれた言葉だ。 「ペアで登頂中にひとりが転落し…

桜の木の神様

今は暑いからご無沙汰しているけど、土日になるとよく近所の公園に行く。 住宅地のど真ん中にある、鉄棒とブランコと砂場しかない小さな公園。 子供が遊んでいることは滅多にない。と…

箪笥(フリー写真)

形見の箪笥

高校時代の英語教師に聞いた話。 解り易い授業と淡々としたユーモアが売りで、あまり生徒と馴れ合う事は無いけれど、なかなか人気のある先生でした。 ※ 昔、奥さんが死んだ時(話の枕…

夜の自動販売機(フリー写真)

売り切れの自動販売機

ある夏の深夜、友人と二人でドライブをした。 いつもの海沿いの国道を流していると、新しく出来たバイパスを発見。 それは山道で、新しく建設される造成地へと続くらしかった。 …

綺麗な少女

夏が近くなると思い出すことがある。 中学生の時、ある夏の日のことだ。俺は不思議な体験をした。 夏休みを迎えて、同世代の多くは友達と遊んだり宿題をやったりしていただろう。 …

老夫婦(フリー写真)

祖父母の夢

盆に母屋の死んだじいちゃんの夢を見た。 母に言ったら、 「じいちゃん帰って来たんだね」 と言われた。 ※ それから10年。 10年も経ってから、 「実…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。 田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…

猫の親子(フリー写真)

魔法の絆創膏

俺がまだ幼稚園生だった頃の話。 転んで引っ掻き傷を作って泣いていたら、同じクラスのミヤちゃんという女の子に絆創膏を貰ったんだ。 金属の箱に入ったもので、5枚くらいあった。 …

名も知らぬ息子

「僕のお母さんですか?」 登校中信号待ちでボーっとしていると、突然隣の男が言った。 当時私は20歳の大学生で、妊娠・出産経験はない。それに相手は、明らかに30歳を超えていた…