悪夢を見せる子守唄
公開日: ほんのり怖い話
もう時効だと思うから投稿します。
うちには代々伝わる『相手に悪夢を見せる子守唄』というものがある。
何語か判らないけど、詩吟などに近い感じで、ラジオ体操の歌ぐらいの長さの歌。
文字で書くと、
「あ~しぃ~ふっひ~~ったはぁがーーーっ(ハ行は息を吐く音、「がーっ」はタンを吐く時の音)」
という感じで、とにかく独特な歌。
先祖代々、一族中が知っている歌で、
「戦国時代、自分の一族が仕えた殿様を殺した武将の家に入り込み、乳母になって跡取りを殺した」
などという微妙なエピソードまで付いている。
正直眉唾ものだけど、子ども心には怖かったし、
「子守唄歌うよ!」
と親に脅されると泣くほど怖かった。
※
大学時代から25歳まで4年間付き合った彼氏にプロポーズされ、親の紹介までした上で、浮気されていた。
しかもそれがバレた時、彼が逆切れした。
その時は半同棲のようなものだった。逆切れして酒を飲み不貞寝した彼氏に対し怒りが治まらず、初めてこの子守唄を歌った。
三回くらい繰り返したと思う。
そしたらいきなり彼がカッと目を見開き、その場で吐き出した。
ウゲッと思ったけど、吐くだけ吐いたらまたゲロだらけの布団でウトウトし始めたので、そのまま放置して帰った。
子守唄のせいなのか酒のせいなのかはその時点では分かっていなかった。
※
その後、相手の親御さんから慰謝料を貰い別れた後に、彼の友人から
「悪夢を毎日見ている」
と教えられた。
内容は教えてもらったけど、とにかく自分が死んで腐って行くような夢ばかり見ているらしい。
ご飯も食べられないらしく、見る見る痩せて行く。
更に一年ほど経った後、会社を辞めて入院するレベルで病んだことを聞いた。
その後、彼は転職して地元に戻ったから、どうなったかは知らない。
あれが子守唄のせいなのか、本人のせいなのか分からないけど、ほんのり。
またこの歌を歌ってしまわないか考えると少し怖い。