海から聞こえる声

公開日: 怖い話

夜の海(フリー写真)

漁師をしていた爺さんから聞いた話。

爺さんが若い頃、夜遅く浜辺近くを歩いていると、海の方から何人かの子供の声が聞こえてきた。

『こんな夜遅くに、一体何だ?』と思い、声のする方を見つめても暗くてよく見えない。

不思議に思いながらもその日は家に帰った。

何日かして夜遅くに浜辺近くを通ると、また海の方から子供の声が聞こえてくる。

爺さんは浜辺に降りて、声のする方をじっと目を凝らして見た。

暗くてはっきりとは見えないが、声のする方に小さい船があるようだ。

人の姿は見えない。

あの船に子供がいるのか…?

不気味に思った爺さんは、父親にそのことを聞いた。

父親は暫く押し黙り、ある漁師の話を始めた。

男はこの村に住んでいた。

貝などを採って暮らしていたが、その漁の仕方が変わっていた。

貧しい家の子を預かり、その子供たちを連れて漁に行く。

子供が逃げないように鵜飼いの様に子供の首に紐を括り付け、海に潜らせ貝などを捕らせた。

男は冷酷で、何も採らずに上がって来た者や疲れて泳げなくなっている者は棒で容赦なく殴りつける。

過酷で厳しかったため、何人も子供が亡くなった。

ある日、男はいつものように子供たちと漁に出掛け、そしてそのまま帰って来なかった。

死んだ子供たちに祟られたのだろうという噂が流れた。

それ以来、夜になると子供たちの声と、誰も乗っていない小舟が現れるようになったそうだ。

関連記事

浜辺(フリー写真)

小人の石

小学生の頃、俺の家族は青森の海沿いの田舎に住んでいた。 俺は幼い頃からよく浜で遊んでいたのだが、年末の1週間は夕方に浜で遊ぶのは禁止されていた。 だが小学3年生の大晦日、…

第二次世界大戦(フリー素材)

再生

祖父が戦争中に中国で経験した話。 日本の敗色が濃くなってきた頃、祖父の入っていた中隊は中国の山間の道を南下していた。 ある村で一泊する事になり、祖父達下士官は馬小屋で寝る事…

赤いミニスカートの女

サイフの持ち主は

これは今から7年ほど前、私が一人暮らしを始めたばかりの頃の話です。 高校を卒業し、就職と同時に実家を出て、徒歩30分ほど離れた土地で初めての一人暮らしを始めました。まったく知ら…

野球のバッター(フリー写真)

避けられない未来

都内のある高校に、ちょっとした怪談が流行った事がありました。 「校舎の横に植えてある手前から四番目のポプラの木を、夕暮れ時に見に行くと、 頭蓋骨が転がっている事があり、そ…

冬の森(フリー写真)

森の中の奇妙な人影

ある寒い冬の夜、若者のタカシは深い森を通って家に帰る道中でした。 彼の家は山奥にある小さな村で、最寄りの町からは車で数時間かかる場所にありました。 その日、タカシは町で仕…

お墓参りで使用する水桶(フリー写真)

お墓を広くすること

実家は山の中にある田舎なのだが、近所に見栄っ張りで有名な家族が居た。 特におばあさんが見栄っ張りで、息子や孫の自慢話ばかりすることで、近所から嫌われていた。 ある日、そのお…

山を穢した代償

以前に住んでいたマンションの大家さんは、御主人が亡くなったのを機に田舎の土地を処分し、都会にマンションを建て息子夫婦と同居した。 老女は何かと話し掛けてくれ、俺も機会があれば田舎…

銀杏の木(フリー写真)

止まった時間

私が小学校3年生か4年生の時のことです。 友人5人と神社の境内で『ダルマさんが転んだ』をやっていました。 小学校の帰りに道草をくって、そこいらにランドセルを放って遊んでいま…

マネキン工場

幼い日、何てことなく通り過ぎた出来事。その記憶。 後になって当時の印象とはまた違う別の意味に気付き、ぞっとする。 そんなことがしばしばある。 例えば。 小学生の…

テレアポのバイト

ちょっと前にテレアポのバイトをしていた時なんだけど。 インカム着けて通話しつつも、お互いの内容がなんとなく聞こえるくらい小さな事務所だった。 そこでバイト仲間の一人が妙なこ…