田んぼの案山子の秘密

田んぼ

私は田舎に住んでいて、学校への通学路は常に田んぼの脇道を歩いていた。

ある日、帰宅中に田んぼの中にピンク色の割烹着を着た姿が見えた。

「田植えをしているのか」と思ったが、その人の動きが異様だった。

片足で腰を揺らしながら、白い紐のようなものを回していた。

その動きはフラフープをしているようだった。

不安を感じながらも、私はその姿を見続けた。

しかし、その人物の顔は見えなかった。

まるで写真がブレているように、顔だけがぼやけていた。

私は目をこすって確かめようとしたが、それでも顔ははっきりしなかった。

その人物が近づいてきた瞬間、私は恐怖で意識を失った。

目を覚ましたら、自宅の布団の中だった。

周りには家族と近所の坊さんが念仏を唱えていた。

祖母によれば、私が出会ったのは「案山子の神様」と呼ばれる存在で、私を仲間にしようとしたとのこと。

その後、私は田んぼに置かれた案山子の恐ろしい過去を知った。

昔、食糧難の時期に、村では役に立たない人を食糧消費を減らすために処刑していた。

しかしその方法は残酷で、獣を避けるために片足を切り、十字の木に縛りつけ、田んぼに立て掛けたという。

縛られた人々は飢えや日射病で亡くなり、中には野獣に襲われる者もいた。

この非道な行為のせいで、村には多くの異変が起こった。

そして、案山子にされた人々は「神様」として崇められるようになった。

しかし、この話が本当かどうかは定かではない。

私の家族も正確な真実を知らないようだった。

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