先生の心当たり
公開日: 怖い話
小学5年生の夏休みが明けた9月1日。
始業式も終わり、久しぶりの友達との再会に『自分はどこへ行った』『何を見た』などの話に花を咲かせていると、真っ黒に日焼けした担任の先生が教室に入って来た。
「おーっ!お前らみんな真っ黒だなぁー!海にでも行ったのか?」
「うん。先生も黒いけど海に行ったの?」
「先生は、○山に行って来たんだ。だから、シャツの下は真っ白だけどな。
この夏は、色々あって大変だったんだ」
「えっ? 先生、何、何?」
「あ…いや、また今度な…」
そう言って、先生は出席を取り始めた。
※
それから暫くの間、妙な事が続いた。
クラスの生徒に怪我人が続出したのだ。
その数、2週間で実に18名。
それも全員右半身のどこかを骨折しているのだ。
この異常事態には、小学生と言えども『何かあるのではないか』と噂が走り、当然、学級会ではこの話が議題に挙がった。
「みんな、最近怪我が多いけれども、夏休み明けでたるんでいるんじゃないか?」
「先生!みんなは、呪いを誰かがかけたんじゃないかって言っています」
「そんな馬鹿な事を言うんじゃない」
「だって、みんな右手や右足を怪我しているんですよ」
「呪いや祟りなんて……そんな…」
こう言うと、先生は眼を閉じて黙りこくった。
「………あっ!」
そう言うと、突然先生は立ち上がり、
「心当たりがあるから、任せなさい」
と言い、学級会はそこで終わった。
その週、先生は学校を休んだ。
※
翌週、私たち生徒が教室に入ると、黒板の上には一枚の御札が貼ってあった。
それは先生が夏休みに行った○山にある、○山神社の御札だった。そして、
「これで大丈夫!もう怪我はしないから安心だぞー」
と一言告げると、それ以上はこの件について何も話さなかった。
それ以降、骨折や怪我をする生徒はぴたりと居なくなった。
※
その後、卒業してからこの話を再度先生に尋ねたが、
「いや、ちょっと、山で心当たりがあってな……」
と言って言葉を濁し、答えてはくれなかった。
※
20年以上後の同窓会で知った事だが、先生が登った山で、前日に滑落事故があった。
そして翌日、手足が激しく損傷した遺体を偶然通り掛かった先生が発見した。
しかし、そのまま遺体を連れて下山することは出来ない。
仕方なく先生は遺体をそのまま残して、下山後に警察に連絡したという…。