さよなら
中学生の頃、一人の女子が数人の女子から虐められていた。
いつも一人で本を読んでいるような子で、髪も前髪を伸ばしっ放しで幽霊女なんて言われていた。
でもさ、その子滅茶苦茶可愛かったんだよね。
普段隠れている目はぱっちり大きくてくっきりした二重瞼、まつ毛も長い。
だから俺を含めた一部の男子からは人気があって、何人かはよく話しかけていたんだけど、その子は大抵一言二言返事を返すものの話を続けようとしない。
多分、そんなところが虐めている女子達は気に入らなかったんだろうね。
徐々に虐めはエスカレートして行った。
その子を気に入っている男子達は虐めを見かけたら止めたりしてたんだけどさ、それでも虐めは無くならなかった。
ところで、その子は「おはよう」と言えば必ず「おはよう」と返してくれるけど、「さよなら」を返してくれた事は無かった。
でもさ、その子が一度だけ「さよなら」を言った時があった。
その子を虐めていた女子連中に。
その日、その女子連中は全員死んだ。それぞれ帰宅途中に事故に遭って。
偶然だとは思うけど怖かったよ。自分が「さよなら」を言われたら自分が死ぬんじゃないかってね。
だから俺はその子に「さよなら」を言うのはやめた。
それでも、その子に話しかけて「さよなら」まで言うやつはいた。正直スゲーと思ったよ。
まあ、中学を卒業するまでその子が誰かに「さよなら」を言うことは二度と無かったんだけどね。