霊視

公開日: 怖い話

916151232370671

あるテレビ番組のディレクターが心霊番組の撮影をしていた。

母親、息子、娘の3人家族のインタビューカットから始まった。

彼らは目に涙を浮かべながら、父親の事を話してくれた。

その様子を見て、ディレクターは満足のいく映像が撮れそうだと感じた。

次に霊能者が登場して、父親が着ていた服から霊視をすることになっていた。

霊能者は服を握り締め、霊視を始めた。

長い沈黙…。

その沈黙は予定よりもずっと長く続いた。

何かあったのだろうか。

普段なら、流暢な話しぶりで有名な霊能者が、霊視に対して曖昧なコメントしかしない。

それもブツブツ呟いているだけで、様子がおかしい。

ディレクターはコメントをどうにか引き出そうと気の利く質問を投げかけたが、霊能者はしどろもどろになっていた。

スタッフもこの緊急事態にどうしていいか分からず、立ち尽くしたままだ。

「これでは番組が作れそうもない…。やばいことになったぞ」

ディレクターは半ばパニック状態になっていた。

帰りのマイクロバス内では、どんよりした空気が漂っていた。

ぐったりしているディレクターに、霊能者がゆっくり近づいてきて呟いた。

「惨殺されているよ」

ディレクターは驚きの表情を見せた。

さらに、霊能者は恐るべき発言をする。

「父親は惨殺されているよ、あの家族に」

「家族にだって!?」

「殺人者の前では話せないよ。家族が住んでいる家からそう遠くない裏山に埋められているよ」

関連記事

山

土着信仰

俺の親の実家の墓には、明治以前の遺骨が入っていない。 何故かと言うと、その実家がある山奥の集落には独自の土着信仰があり、なかなか仏教が定着しなかったから。明治まで寺という概念すら…

ごぜさんの鐘

辺り一面山だらけ、どこを見渡しても山ばかりという地方の出身です。 小さい頃からお世話になっていたお寺に「鐘」がありました。 「鐘」と書いたのには理由がありまして、それは布と…

自殺志願

年月が経つにつれ自信がなくなっていく思い出です。 俺が19歳の頃の話です。高校は卒業していましたが、これといって定職にもつかず、気が向いたら日雇いのバイトなどをしてブラブラしてい…

インターホン

俺が5才の頃の出来事。 実家が田舎で鍵をかける習慣がないので、玄関に入って「○○さーん!」と呼ぶのが来客の常識なんだが、インターホン鳴らしまくって「どうぞー」って言っても入ってこ…

肋骨を掴む手

最寄の駅からおいらの会社まで自転車で通っていたことがある。 その日は仕事が結構早めに終わり、少しずつ暗くなる路地裏を自転車で家路を急いでいた。 蒼い宵闇が降りてくる。境界線…

銀杏の木(フリー写真)

止まった時間

私が小学校3年生か4年生の時のことです。 友人5人と神社の境内で『ダルマさんが転んだ』をやっていました。 小学校の帰りに道草をくって、そこいらにランドセルを放って遊んでいま…

暗い夜道(フリー写真)

ヤモリ女

あれは大晦日のことでした。 深夜、煙草を買いに行こうと少し離れた場所にあるコンビニへ出向きました。 私の住んでいる所ははっきり言って田舎なのですが、昔は街道筋だったので、狭…

ドライブイン

異界のドライブイン ― 消えた車と巨大な蛆

ドライブのはじまり この話は、いわゆるオカルトや怪談に分類されるかどうか、少し微妙なところがあります。ですが、個人的には今でも忘れられない、非常に恐ろしい体験でした。 そ…

異世界

記憶が違う男

毎年、夏になると、地元に帰省して高校時代の仲間5人で集まっている。 今年も例年どおり集まったのだが、ひとつだけ、どうにも説明のつかない出来事があった。 誰かに聞いてもらい…

女性の肖像画

今朝、鏡を見ていたらふと思い出した事があったので、ここに書きます。 十年くらい前、母と当時中学生くらいだった私の二人でアルバムを見ていた事がありました。 暫くは私のアルバム…