火葬

公開日: 怖い話

炎(フリー写真)

私の知人の実家では少し前まで、山頂の小さな野原で火葬を行っていた。

山奥の集落ゆえ、死人が出ると村内で埋葬するしかなかったのだ。

火葬をする夜は、村の家々は固く扉を閉め、物忌みをしていた。

何でも、その山には性質の悪い何かが居て、時々死体に入って暴れたのだという。

なぜか取り憑かれるのは、人間の死体だけだったらしい。

死体が村に入り込んで奇声を上げる様は、とても正視に耐えなかった。

また遺族も、そのようなことには我慢ができなかった。

そのため死体は灰にし、取り憑かれないようにして埋葬していたのだ。

土葬するなど以ての外だった。

しかし時には、生焼けの死体が村に殴りこむこともあったらしい。

そんな事態を防ぐため、火葬の際は五人がかりで見張ったのだそうだ。

悲鳴を上げて飛び出す死人を火中に押し返すのは、とてもおぞましかったという。

大きな市に合併されると、道路も引かれ合同の火葬場も使えるようになった。

同時に、死体の心配もせずに済むようになったという。

そんな昔ではなく、まだ昭和の始め頃の話なのだそうだ。

関連記事

繰り返す家族

小三のある男の子が体験した話だ。 男の子はその日、学校が終わって一旦帰宅してから、仲の良い友達と一緒に近くの公園で遊ぶことにした。 夕方になるまでかくれんぼをしていたら、珍…

神秘的な山

神隠しの山と消えた一家

平成14年9月7日、広島県世羅町京丸の名所「京丸ダム」にて、ある通行人が湖底に沈む車を目撃。警察へと通報が成された。 湖底から引き上げられた車の中からは、四人の遺体が発見される…

逆さの樵面

私が生まれる前の話なので、直接見聞きしたことではなく、その点では私の想像で補ってしまう分もあることを先に申しておきます。 それから地名、人名等は仮名としました。 もったいぶ…

教室(フリーイラスト素材)

先生の心当たり

小学5年生の夏休みが明けた9月1日。 始業式も終わり、久しぶりの友達との再会に『自分はどこへ行った』『何を見た』などの話に花を咲かせていると、真っ黒に日焼けした担任の先生が教室に…

山神様

これは、俺の曽祖父が体験した話です。大正時代の話ですので大分昔ですね。 曾じいちゃんを、仮に『正夫』としておきますね。 正夫は狩りが趣味だったそうで、暇さえあれば良く山狩り…

部屋

歪む空間

はじめにお断りします。 この話には、「幽霊」やいわゆる「恐ろしい人間」は登場しません。 しかし、私自身、いまだにこの出来事が何だったのか理解できないのです。 もし、…

テープレコーダー

これは友人から聞いた話。 ある男が一人で登山に出かけたまま行方不明になった。 3年後、湿地帯でその男の遺骨が発見され遺留品も回収されたが、その中には一つのテープレコーダーが…

お地蔵さん

奇妙な墓石

ある山間の墓地に、墓石と混じって奉られているお地蔵様のような、異様な石が四体並んでいます。これらの石は道祖神のようでもあり、その外見から一種の墓石として扱われているようですが、その形…

ウォーリーを探せの怖い都市伝説

世界中で愛されている絵本が「ウォーリーを探せ」である。 何百、へたしたら何千という群衆が描かれた絵本の中から、ウォーリーという一人の男を探す絵本である。 ウォーリーの特徴は…

爪を食べる女

最近あった喫茶店での話。 普通に時間を潰していたところ、隣のテーブルでなにやら物音。 カリカリカリという音。最初は特に気にもならなかったので本を読んでいたのですが、30分ほ…