ひょっとこのお面

公開日: 怖い話

ひょっとこのお面(フリーイラスト)

俺の爺さんには従兄が居たらしいのだが、十代前半で亡くなっている。

それがどうも不自然な死に方だったらしく、死んだ当時は親戚や近所の連中に色々騒がれたのだそうだ。

戦後すぐの、物が無い時代のある日のことだ。

その従兄は、友達と何か売ったり食べ物と交換できるものはないかと、実家の蔵の中を漁っていた。

その従兄はうちの本家の人間だったので、蔵にはガラクタとも骨董品ともつかない物がごちゃごちゃとあったらしく、その中から何か見つけてやろうと思ったらしい。

探しているうちに、ひょっとこのお面を見つけたそうだ。

そのお面が気に入ったのか、従兄はそれを被って通りに飛び出し、でたらめに踊りだした。

もちろん一緒に居た友達連中にもバカ受けで、ひとしきり大騒ぎして、そのまま夕方までひょっとこの面を被って遊んでいた。

しかし、そのうち従兄が何かに躓いたのか、突然転んで道に倒れたまま動かなくなった。

最初はふざけているのかと思ったが、呼んでも揺すっても返事が無いので様子がおかしいと思い、すぐに抱え上げて本家の座敷に連れて帰った。

倒れたままの状態で身体は殆ど動かないのだが、微かな声で

「面を…面を取ってくれ…」

と呻く声が聞こえる。

慌ててひょっとこの面を取ると、顔色は土色、唇は紫。すっかり生気が失くなっていて、まさに死人の顔だったという。

もう殆ど呼吸もはっきりしない状態の従兄を見て、家族も半ば覚悟して医者を呼んだ。

従兄が倒れてから医者が来るまで、実に30分と経っていないはずだった。

しかし駆け付けた医者は、従兄を少し見てすぐに、厳しい調子で家族に言った。

「どうして放って置いたんですか!? 亡くなってから半日は経っています」

関連記事

禍垂(かすい)

昔まだ十代の時で、して良い事と悪い事の分別もつかない時の話。 中学を出て高校にも行かず、仕事もせずにツレとブラブラ遊び回ってた。 いつものようにツレから連絡があり、今から肝…

雪に覆われた山(フリー写真)

雪を踏む足音

初雪の山は登ってはいけない。 そういう話を仲間内でよく聞いていたが、単に滑りやすくなるからだろうと軽く捉えていた知り合いは、命の危険に晒された。 彼は登山歴3年くらいの経験…

林道(フリー写真)

姥捨て山

俺の兄貴が小学生の頃、まだ俺が生まれる前に体験した話。 兄貴が小学5年生の春頃、おじいちゃんと一緒に近くの山へ山菜採りに入った。 狙っていたのはタラという植物の芽で、幹に棘…

釘

恨みクギ

俺が若かった頃、当時の彼女と同棲していた時の話。 同棲に至った成り行きは、彼女が父親と大喧嘩して家出。彼女の父親は大工の親方をしている昔気質。あまり面識は無かったが、俺も内心びび…

家宝の銅鏡

僕の家には家宝と呼ばれるお宝が三つある。 一つは家系図。約400年前まで遡る家系図は巻物数十巻に及び、勿体振った桐の箱に収められている。 もう一つは刀。かなり昔にご先祖様が…

冬の村(フリー素材)

奇妙な風習

これは私の父から聞いた話です。 父の実家は山間の小さな村で、そこには変わった習慣があったのだそうです。 それは、毎年冬になる前に行われる妙な習慣でした。 その頃になる…

テレビの記憶

これは昔、NHKで地方の紹介をする番組で放送されました。 それは祭りとか風習とかで毎週一つの土地をクローズアップして紹介する番組だったのですが、一度ある雪深い地方が紹介された時、…

5ミリ

ある大学生が自宅の自室で勉強していたそうなんです。だけど、なにやら背後に視線を感じる。 どうしても気になりふと振り返ると、背後の側面にある本棚と本棚の隙間から、小学六年くらいの男…

B型肝炎

薬害エイズ。 国は非加熱製剤が危険であることは、それを禁止する10年近くも前から知っていた。 非加熱製剤が危険であると知ってから1年後、アメリカの会社が日本の厚生省に安全な…

変な長靴

俺は大学生時代、田舎寄りの場所にアパートを借りて一人暮らしをしていた。 大学が地方で、更に学校自体が山の中にあるような所だから交通の便は悪くて、毎日自転車で20分くらいかけて山を…