中古のナビ

公開日: 心霊体験 | 怖い話

a9d42d55

8年くらい前の体験を書いてみるよ。

中古車屋で店長をやってるダチがいるんだけど、そいつから中古のナビを安く買ったんだ。

ちゃんと名の知れたメーカーの、後付けでダッシュボードに乗せるやつ。

何でも軽自動車を若い店員が買い取ったけど、あとでダチが中を見たら、外は綺麗に直してるけど、中はフレームまでいってる事故車でちょっと売り物になりそうもない。

どうせ数万で買ったもんだから部品を取れるだけ取って廃車にするってことで、その車についてたナビを譲ってもらった。

当時の俺の車は買って7年目になる国産のSUVで、それまでナビは使ったことがなかったんで結構嬉しかった。

最初の内は特に機能面での不具合もなかった。ちょっと案内の音声が乱れることはあったけどな。

例えば「300メートル先、交差点を左です」という女の人の声の最後のところが「でにゅぅ」という感じで低くなる。

でも、それくらい何でもないと思って気にしなかった。

それで、自分の家の住所を入力して、仕事であちこち出かけるたびに帰宅モードで案内をさせてみた。

別にナビがなくとも帰れるんだけど、まあ遊んでたんだな。

ところが暫くして、このナビは俺んちの南側にある大学の横の交差点を絶対指示しないことに気が付いた。

その交差点の道路はどっちも何十年前からあるんで、データが古くて認識できないとかじゃないと思う。

だけど、なぜかその交差点に入る前に左折や右折を指示して遠回りになってしまうんだ。

2〜3回はナビの言う通りに走ったけど、馬鹿らしいから無視してその交差点を通ったんだ。

そうしたらその交差点に入る10メートルくらい前になって、違う道を指示していたナビの液晶がブラックアウトした。

うんともすんとも言わなくなって故障かと思ってたら、交差点を過ぎてまた10メートルくらいしたら液晶が少しずつ赤黒く明るくなっていって、元に戻ってまた道の指示を始めた。

何かその交差点を機械が嫌がってるような感じで、ちょっと不気味だった。

それから何度かその交差点を通ったんだけど、ナビの症状は同じだった。

ある日、会社から県外に出てかなり遅くなって帰ってきた。夜の2時過ぎで小雨が降ってたな。

疲れてて早く家に帰りたかったんで、その交差点の道を通ることにした。

車通りはあまりないところで信号は黄色の点滅になってた。

ナビはいつもどおりブラックアウトしたけど、徐行して走り抜けようとした。

すると、人影なんかなかったはずなのに、気づいたら目の前に自転車の女の人がいる。

とっさにハンドルを右に切ったんで、車は対向車線を越えて右の歩道に乗り上げた。

あまり慌てたんで、自転車を轢いたかどうかも覚えてない。

それで、車外に出て確認したんだけど何にもない。ただ濡れて街灯に照らされた路面があるだけ。

キツネにつままれた感じで、釈然としないまま車に乗り込んだら、消えていたナビがぱっとついて、液晶にモザイクがかかったように崩れた女の人らしい顔が現れ、ナビの音声で

「…私はここで死んだんでにゅぅぅぅぅ」

俺はエンジンだけ切って、車をそこに置いたまま家まで逃げて帰ったよ。

次の朝早くダチに連絡して、その場所に来てもらってナビを外してもらった。

迷惑がると思ったけどそうでもなかった。

ダチは、

「このナビつけてた軽自動車、相当大きな事故起こしてたみたいだね。

廃車にするまで店の前に置いてたけど、雨の日に車の横を通りかかったら、微かに血の臭いがするんだよ。俺たちには分かるんだ。

このナビもなんかあったんだろ。いや、言わなくていいよ知りたくないから」

と言った。

その後は特に何もないけど、その交差点は通らないようにしてる。

関連記事

死を恐れる男

ある村に、死を異常に恐れる男がいた。 特に男が恐れていたのは「自分が埋葬された後に、棺の中で息を吹き返してしまうのでは?」というものであった。 その男が病気の床にあるとき、…

廊下

迷宮と煙草

私は都内で雑誌関係のライターを担当しています。 多岐にわたるテーマの記事を手がけるため、日常は刺激に満ちていると言えるでしょう。 その中で、オカルト関連の記事は、読者から…

抽象模様(フリー画像)

ヤドリギ

あまり怖くなかったらすまん。ちょっと気になることが立て続けにあったんで聞いて欲しいんだ。 自分は子供の頃からオカルトの類が大好きでな、図書館などで読んでいたのは、いつも日本の民話…

カップル(フリー素材)

恋人との思い出

怖いと言うより、私にとっては切ない話になります…。 私が高校生の時、友達のKとゲーセンでレースゲームの対戦をして遊んでいました(4人対戦の筐体)。 その時、隣に二人の女の子…

公衆電話

禁忌の電話番号

皆さんは"かけてはいけない電話番号"というものをご存知でしょうか。この話では具体的な番号は掲載しませんが、興味がある方はインターネットで検索してみると良いでしょう。特に注目すべきは、…

公園

公園の友達

お盆の季節になると、私はある思い出をよく振り返る。 私が小学2年生のころ、タケシという友達と日々一緒に遊んでいた。 我々のお気に入りの場所は川の近くの公園で、日が暮れるま…

クシャタ様

4月の中旬頃、高校の時の男友達から電話があり、二人で飲むことになったんです。 高校の時はそれなりに仲が良かったのですが、大学に進学してからは会うこともなくなり、話すのは2年ぶりで…

廃墟

消えた声、風の中から

高校2年の夏休みのことだった。 霊の存在など信じないと豪語していた友人が、地元で“出る”と噂されていた廃屋に、ひと晩ひとりで泊まってみると言い出した。 その日の昼間、彼は…

時が止まる場所

昔ウチの近所に結構有名な墓地があって…。 当時俺は、よく友達と近所の大きな公園で、自転車を使った鬼ごっこをしてたんだ。 ある日、リーダー格の友人Aの意見で、公園内だけではつ…

夜のビル群(フリー写真)

モニターに映る影

俺が警備員をやっていたのは、テナントが幾つか入っているビルだった。 常駐警備員というのは、途中に待機時間があるくらいで、基本的に交代制の24時間勤務なんだよ。 故に深夜ビル…