虫送りの実盛さま
虫送りの火が夏の田を照らす夜、藁の実盛さまには目がなかった。背負って川へ送る私の後ろで、もうひと組の足音が鳴った。振り返ってはならぬ決まりの先で、人形の顔にいつ…
虫送りの火が夏の田を照らす夜、藁の実盛さまには目がなかった。背負って川へ送る私の後ろで、もうひと組の足音が鳴った。振り返ってはならぬ決まりの先で、人形の顔にいつ…
怖い話。北国の表具師が亡き師匠の蔵で見つけた黒漆の函には、決して数えてはならない結び目があった。山の向こうへ渡り戻らぬ集落の人々の面影を結いこんだ数え函。数える…
秋田の山奥にある築百年の古民家を解体していた大工が、太い大黒柱の中に封じ込められた異様なものを見つける。地元の老人が語った禁忌の意味とは。…
瀬戸内の小島で文化財調査中に立ち入った廃校。黒板に残されていた文字が、その島の禁忌を語り始める。田舎の怖い話。…
沼津の港にある屋根だけの公衆電話から、かけてはいけない番号に電話をしました。名前は名乗っていません。それなのに翌年、横の電話台の数字に、私の年齢が書き足されてい…
北東北の寒村に残る土着のイタコを録音するため、私は年に三日だけの大祭に立ち会いました。場所と日が揃わねば口を開かない理由、そして白い布で目を覆い続ける理由。禁を…
民俗学のゼミの手伝いで、地図にない山あいの集落にひと夏を過ごした。写してはならぬ顔という言い伝えを、私は鉛筆一本で試した。鏡をすべて外した家、白く塗りつぶされた…