夜の合宿地での不思議な出会い
私たちの高校には天文部という小さな部活がありました。
夏と言えば、ペルセウス座流星群を観測する合宿が恒例となっていました。
ある年、合宿地として選んだのは、都会の喧騒からかけ離れた山中の宿泊施設。
この場所は夜空がとても綺麗で、星空の観測には最適との評判を聞いていました。
8月中旬、合宿当日。
宿泊施設の裏には広大な空地が広がっており、夜の観測には打ってつけでした。
この場所には電灯も少なく、完全な暗闇が広がっていました。
私たちは、満点の星空に心を奪われ、盛り上がってしまいました。
女子15人の集団ですから、賑やかな笑い声や話し声が響き渡っていました。
その中で、FM観測のためのラジオが一台ありました。
何の前触れもなく、そのラジオから突如として奇妙な雑音が聞こえてきました。
まるで古いレコードの針音のような、不気味な音でした。
その雑音に驚いた瞬間、白い服を着た中年のおじさんが現れました。
「こちら、何をしているんですか?」
驚いた私たちは顧問の先生に目を向けると、先生はおじさんと会話を始めました。
簡単な説明の後、おじさんは「こんなところで何をしているのか気になっただけ」と微笑みながら去って行きました。
そして、おじさんの姿が遠ざかると同時に、ラジオの雑音も消え去りました。
「あのおじさん、何者なんだろう?」
「ラジオの雑音と関係があるのかな?」
といった軽い冗談が飛び交いました。
しかし、観測を終えた後、部員の一人が気づいたのです。
「あれ、あのおじさんが消えた方向… そこ、墓地じゃない?」
一同、驚きと戦慄で言葉を失いました。
「幽霊だったのかも…」「まさか…」
と、部員たちの間で囁きが広がりました。
けれど、長い夜を徹夜しての観測で、疲れていた私たちは冗談のようにその場を取り繕いました。
「おじさん、私たちの騒がしさに驚いたかも。ごめんなさいね!」
と、学校の伝統的な踊りを全員で踊りながら、宿へと戻りました。
翌朝、先生は笑顔で私たちに言いました。
「幽霊より、お前たちの方がよっぽど不思議だよ。」
私たちは、この合宿の出来事を学校で伝えることにしました。
以降、このエピソードは部活の中で都市伝説のように語り継がれています。