再生
祖父が戦争中に中国で経験した話。
日本の敗色が濃くなってきた頃、祖父の入っていた中隊は中国の山間の道を南下していた。
ある村で一泊する事になり、祖父達下士官は馬小屋で寝る事になった(多くの兵は野宿だったので、屋根があるだけ上等だったらしい)。
※
真夜中に馬が騒ぎ出したので明かりを灯してみると、天井から身体は猿、顔は老婆の生き物がぶら下がっていた。
銃を撃ったが、まるで当たらない。
騒ぎに気付いた上官がやって来て、その生き物を見て驚きながらも、土地の人間を連れて来て通訳を介し
「お前は何者か? 何か伝えたい事があって現れたのか?」
と尋ねた。
すると生き物は
「お前達の国は滅びる。だが三度の再生を果たすだろう」
と言った。
「それは吉予言か?」
「そうではないとも言え、そうだとも言えぬ」
「再生するのだろう?」
「四度目は無い」
そう言って、その生き物はするすると梁を伝い消えて行った。
「追って捕らえますか?」
と聞く祖父達に上官は、
「あれは常世の者ではない、放って置け」
と言ったという。
※
戦後を一度目の再生と考えるなら、残り二回か…。
四度目は無いらしいからな。