塊紫水晶奥

公開日: 洒落にならない怖い話

紫の抽象的模様(フリー画像)

私には年の離れた兄が居る。普段何をしているか判らない飄々とした自由人。

偶に家に遊びに来ては、変な物を置き土産として置いて行く。

半年ほど前、玄関に磨かれていない紫色をした水晶の塊を置いて行った。

邪魔になるし、何か気持ち悪いので持って帰ってくれと抗議するのだが、

「いいから、いいから、何か良い事あるかもな♪」

と取り合ってくれず、仕方なく靴箱の上でオブジェとなっていました。

それが1ヶ月ほど前、失くなってしまいました。

邪魔な物でも家から物が失くなるのは気味が悪いので、旦那とどうしようかと相談していたら、兄が

「いいんじゃない? 邪魔にされてたんだから、厄介払いだよ♪」

と持って来た本人は特に気にした風も無いので、旦那と相談し、近所の駐在さんの奥さんに相談するだけにしました。

それで数日前、娘の同級生Aちゃんが交通事故。両足骨折の重傷。

幼稚園でこの話を聞き、ママ友たちとお見舞いの段取りなどをして帰りました。

その日の夕食時、旦那の好きなお酒を提げて兄がご飯を食べに来ていました。

そこへ姑さんに伴われたAママが来ました。

曰く、家にお茶で集まった際、凄く惹かれてつい出来心で盗ってしまったとの事。

手に入れて以来、魅入られたようにAちゃんと二人で眺めてしまうようになっていたそうです。

最近、Aちゃんが指を切ったり頭をぶつけたりと、小さな怪我が多くなり不安になってきていたとの事です。

そして不気味な老人の出てくる夢を見るようになり、事故の前日、ニタニタ笑いながら

「モロタ、アリガト、アリガト」

と呟き、消えて行ったそうです。

その時、Aママは何故か水晶と関係していると思ってしまったそうで、姑さんに相談して謝りに来たとの事。

こちらとしては狐に摘まれたような話で、どこか他人事のようにAママと姑さんの謝罪を受けていました。

しかしAママが件の水晶をカバンから出した途端、家の兄が血相を変えて飛んで来て、水晶を玄関からポイ!

「誘惑に負けたら、イカンよ。姑さんの言う事、ちゃんと、聞いて、暮らしなさい」

普段ヘラヘラしている兄とは別人の顔で諭し、二人を帰してしまいました。

兄にどういう事か問うたところ、曰く

・家の娘に災厄が来るのが判った。

・阻止する為、水晶を置いた。

・あの水晶は厄を吸い込むと、トウケ(盗気)のある人間には物凄く魅力的に見えるとの事。

・人に厄を擦り付けるにはこれが一番。

・まさか帰って来るとは思わなかった。

・あの姑さん、物凄く良い人なんじゃないか?

Aちゃんに災厄が起きたし、いつものホラ話とは雰囲気が違うし、私も信じてしまいました。

他のママ友にこの話はしていないので、盗った話は広がっておらず、近所は至って平穏です。

盗み懸案は解決したっぽいが、本気で家の兄が何者か判らなくなってきた…。

旦那と長男はますます兄を憧れの目で見るようになりました…。

関連記事

口

笑い女

先週の金曜、会社の先輩の大村という男が死んだ。 もちろん直接現場を見た訳ではないけど、マンションの自室で、自分の両耳にボールペンを突き刺して死んでいたらしい。 大村自身の手…

裏山

マネキンの警告

うちは田舎だから、シーズンになるとよく裏山にキノコ採りに行く。 小学生の頃は、よく採れる場所をじいちゃんに教えてもらいながら二人で行っていたのだが、中学生になると一人で行ったり友…

シャッター(フリー写真)

未解決の行方不明者事件

この話は、ある探偵事務所のY氏から聞いた、未解決の行方不明者事件についてのものです。 消えた男性は、長距離トラック運転手でした。 男性はある日、青森へと向かう高速道路をト…

森の小屋(フリー写真)

牛の森

俺の地元に『牛の森』と呼ばれる森がある。 森から牛の鳴き声が聞こえるのでそう呼ばれている。 聞こえると言われている、とかそういうレベルじゃない。本当に聞こえる。 俺自…

くねくね

これは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時のことである。 年に一度、お盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。やっぱり都会とは空気が違…

田舎で起きた事件

これは実際に起こった事件にまつわる話。 今から15年前、俺は当時10歳だった。 俺の地元は山形県の中でも更に田舎なところで、ご近所さんはみんな親戚みたいなものだった。 …

指輪(フリー素材)

指輪

以前、井戸の底のミニハウスと、学生時代の女友達Bに棲みついているモノの話を書いた者です。 実は学生時代の話はもう一つあり、それについて最近判ったことがあったので投稿します。 …

星空(フリー写真)

霊感少女

もう随分前になるけれど、僕が体験した死ぬ程洒落にならない話。 当時大学生だった僕は恋をしました。相手はバイト先で知り合った子。 バイト仲間数人で遊びに行ったりして仲良くな…

ふたりの父親

4~5歳くらいまで、父親が2人いた。 それも、浮気とかじゃなくて、同じ父親が2人。 意味が分からないと思うけど、顔形は全く同じなのに目つきだけが異様な感じがする、とにかくこ…

家宝の銅鏡

僕の家には家宝と呼ばれるお宝が三つある。 一つは家系図。約400年前まで遡る家系図は巻物数十巻に及び、勿体振った桐の箱に収められている。 もう一つは刀。かなり昔にご先祖様が…