イタチの仕業

Mustela_nivalis_-British_Wildlife_Centre-4

祖母の葬式の晩の事。

田舎の古い屋敷で壁3面ガラス張りの小さな和室に1人だった。長い廊下の突き当たりの座敷には祖母が安置されていた。

裏の山には江戸時代からの一族の墓が並び、近くの公園には「城主ですがここで虐殺してごめんなさい、かわりにお社を立てます、許してください」みたいな木札が立っていた。

窓にカーテンもないので、山の上からのサーチライトの光が部屋の壁にあたって不安な影を踊らせていた。

そのとき廊下からひきずるような足音が聞こえてきた。

親戚や客は屋敷の表側の座敷にいるはずなのに、誰か間違えて入ってきたのか。しだいにその足音に合わせてふすまがブワンブワンと波打ちだした。ガラスもビリビリ共振して、部屋全体が揺れて舟の上みたいな感じだった。足音は部屋の前まできたが、また行きつ戻りつしながら消えるまでずいぶん時間がかかった。

とても襖をあける勇気はなかった。

表屋敷にいた家族親戚に話すと、裏にいった人はだれもいなかった。ただこの家には昔から野生のイタチが住んでいて、夜に歩き回る、大きな低い声でうなる、稀に人間を傷つける事もあるので、襖などは不意に開けてはいけないとの事。

どう考えてもイタチの仕業じゃないと思うんだ。

関連記事

団地

団地の謎のおばさん

母がまだ幼かった頃、一家で住んでいた団地での不可解な出来事です。 ある日、母と母の姉(私の伯母)が外で遊ぶために家の階段を降りていました。一階の団地の入口に、見知らぬおばさんが…

山里(フリー写真)

やっかい箪笥

小学校低学年の頃に体験した話。 子供の頃の記憶がはっきりしている自分にしてはおぼろげな記憶なので、一部夢と混ざっているのではないかと思いつつ、なるべく鮮明に憶えているところを。 …

トンネル

霧島、消えた駅

これは一昨日の夜に体験した出来事です。私はいつも通り、都会から田舎の自宅へ帰るために最終電車に乗りました。この日は友人と遅くまで飲んでいたため、21時頃には出るはずが大幅に遅れ、埼玉…

オオカミ様の涙(宮大工6)

ある年の秋。 季節外れの台風により大きな被害が出た。 古くなった寺社は損害も多く、俺たちはてんてこ舞いで仕事に追われた。 その日も、疲れ果てた俺は家に入ると風呂にも入…

じいちゃんの話(長編)

これは俺が10年以上前に体験した話。 当時、俺は田舎にある実家に住んでいた。 実家は古くから立つ日本家屋ではあったが、辺り一面に田んぼがあるほどのド田舎という以外は、ごく普…

夜の自動販売機(フリー写真)

売り切れの自動販売機

ある夏の深夜、友人と二人でドライブをした。 いつもの海沿いの国道を流していると、新しく出来たバイパスを発見。 それは山道で、新しく建設される造成地へと続くらしかった。 …

ドッペルゲンガー

弟のドッペルゲンガーを2回見た。 1回目は自分が3歳の時。 実家は庭を挟んで本宅と離れがあるんだが、庭の本宅寄りの場所で遊んでて、そこから家の中が見る事が出来た。 居間で母が…

田舎の田園風景(フリー写真)

ノウケン様

ついこの間までお盆の行事だと思い込んでいた実家の風習を書いてみる。 実家と言うか、正確には母方祖母の実家の風習だけど。 母方祖母の田舎は山奥で、大昔は水不足で苦労した土地…

笑い袋

もう20年以上前の話です。 当時小学低学年だった私には、よく遊びに行く所がありました。 そこは大学生のお兄さんが住む近所のボロアパートの一室です。 お兄さんは沢山の漫…

繋ぎ目

中学生の頃の夏の話。 そろそろ夏休みという時期の朝、食事を終えてやっとこ登校しようと、玄関に向かったんだ。 スニーカーのつま先を土間でとんとんと調整しながら引き戸の玄関をガ…