満タンのお菓子

abstract-art-eloquence

私の家は親がギャンブル好きのため、根っからの貧乏でした。

学校の給食費なども毎回遅れてしまい、恥ずかしい思いをしていました。

そんな家庭だったので、親がギャンブルに打ち込んでいる間は姉と留守番することが多かったです。

晩御飯は親が帰ってきてから一緒に食べるので、まだ何も支度がされていない状況な上、お菓子などもなくお腹を空かせて待つこともしばしば…。

それでもたまに買い置きのお菓子があると、姉と半分こして食べるのですが、“お菓子が減らない” ことがしょっちゅうありました。

当時『ハンコください』という、きのこの山に似たお菓子が大好きでした。

それで、姉と一つ一つ数を数えて綺麗に半分こして、ティッシュの上に置いて食べていると、いつの間にか空っぽの箱がまた満タンになっていました。

姉と二人でキャーキャー騒いだのを覚えています。

満タンの『ハンコください』を食べ終えるとまた満タン。

嬉しくなって大事に戸棚にしまい、翌日親が居る前で食べるともう増えず、少し不貞腐れながら箱を捨てました。

それからしばらく経って、親が不在でお腹がペコペコだった時、何か食べる物がないかと戸棚を漁っていると新品の『ハンコください』があり、姉と二人で食べたのですが、またしても減らない箱になっていました。

こんなことが数回あり、空腹だった私たちはかなり助けられました。

今でもこの体験は姉も覚えており、「あまりにも空腹だったから神様がお菓子足してくれてたんだろうね~」と言います。

空腹が招いた幻覚と言われればそれまでですが、私達にとってはとても有り難く大事な思い出です。

関連記事

山道(フリー素材)

上位の存在

厳密に言うと、この話は俺が「洒落にならない程怖い」と思った体験ではない。 俺の嫁が「洒落にならない程怖い」と思ったであろう話である。 俺の嫁は俗に言う視える人で、俺は全くの…

メールの送信履歴

当時、息子がまだ1才くらいの頃。 のほほんとした平日の昼間、私はテレビを見ながら息子に携帯を触らせていた。 私の携帯には家族以外に親友1人と、近所のママ友くらいしか登録して…

ソファー(フリー写真)

人の想い

俺は出張マッサージを生業にしているのだけど、十何年か前、名前を言えば誰でも知っている会社の会長さんのお宅に仕事でお伺いした時の事。 いつものように呼び鈴を押して返事を待っていた…

DNA(フリー画像)

遺伝した記憶

数年前、実家で甥っ子や姪っ子たちとトトロを観ていた。 「そういや、うちも昔はこんなお風呂だったよねぇ」 と俺が言うと、何故か家族全員がきょとんとした顔をする。 「ほら…

携帯電話を持つ女性(フリー写真)

家族からの電話

これはある一人暮らしの女の子が、うつ病になった時に体験した不思議な話です。 その女の子は人間関係が原因で仕事を辞め、殆ど引き篭もり状態になり、毎日死にたいと思うようになっていたそ…

三宅太鼓(フリー写真)

三宅木遣り太鼓

八月初旬。 夜中に我が家の次男坊(15歳)がリビングでいきなり歌い出し、私も主人も長男(17歳)もびっくりして飛び起きました。 主人が「コラ!夜中だぞ!!」と言い、電気を点…

死に際に現れる黒い人

最近ネットで読んだのですが、人間が死にそうになっている時、それを助けたりする謎の人物が現れるそうです。 それは死んだ兄弟や親類であったり、声だけであったりするそうですが、正しい逃…

零戦(フリー写真)

身代わり

今年大往生した母方の祖父ちゃんは、零戦乗りだった。 戦中予科上がりだけど特乙や特丙よりも前に出たので、それなりに操縦士の中でもエリート意識はあったらしく、飛行時間をよく自慢して…

シドニー

前世の地

去年、オーストラリアのケアンズ郊外をレンタカーで走っていた際、奇妙なデジャヴを感じました。『ここ、来たことがあるような…』と思いながら、海岸へと続く道を曲がりました。独特のロータリー…

横断歩道(フリー写真)

守護

週末、飲み会で泥酔して帰った時の事。 家の前には深夜でも交通量が多く、事故の多い国道があるのだけど…。 普段は危ないから絶対に斜め横断なんてしないのに、酔った勢いでつい魔…