何で戻ってくるんだ

公開日: 不思議な体験 | 超常現象

しおかぜ橋

3年程前の話。私は今でも、バイク好きで乗ってるんですけど、3年前は俗に言われる走り屋って奴だったんです。

その時行ってた峠の近くに湖があって、そこに大きな橋がかかってるんです。

その橋は自殺の名所で、枯れた物や新しい物まで常に橋の歩道には、花束があったのを憶えています。

ある週末の夜、私は走り仲間達と飲んでました。そのうち、仲間の一人が「今から峠行ってみない?」って言い出したんです。

皆も乗り気で、車にワインやらビールやらを積み込んで出かけて行きました。

道中でビールをあおりワインを飲みながら目的地に向かってましたので、捕まらないように遠回りでも大通りを避けながら車を走らせてました。

なので、おのずと湖の反対側から来る形となり、その橋を渡らなければ、目的地に着かなくなってしまうのです。

しかし、自殺の名所と言う事は知っていましたが怖いと感じた事もなく、橋を渡るのに躊躇いなどは特に感じませんでした。

そして橋に差し掛かろうとしたときに、友人の一人が用を足したいと言い出したんです。

そこで橋の脇にあるスペースに車を止め、皆で用を足すために車を降りました。

その時、 他の友人(K)が飲み終わった空のビール缶やワイン瓶を橋の上から捨て出したんです。

特に私達も止める事などせず、車の外で暫らくの間話をしていました。どのくらいそうしていたでしょうか。

「ドカーン」という凄い音で私達は一様に話を止め、音のした方を振り向きました。

しかし私達の目線の先には、我々の乗ってきた車がエンジンのかかった状態で止まっているだけです。

「???」

皆が何が起こったのか判らずにいました。

そのまま皆が動けずにいると、車のフロントガラスの上を何かの破片がずり落ちてくるのが見えたのです。

「え? 何?」とその車の持ち主で、ここまで運転してきた奴が車に駆け寄り、フロントガラス辺りに散らばった破片を拾って皆の元に持ってきました。

それは緑色をしたワイン瓶の欠片であり、そのラベルは我々が車で飲んでいた物のでした。

しかし、その瓶はKが我々の目の前で、橋の下に投げ捨てたはずです。そして、誰が言い出したと言う訳ではなかったのですが、皆同じ事を考えたんでしょうね。

「橋の下にキャンパ-等、人がいたのか?」って。

そして、Kがビンを捨てた場所まで行き、皆で橋の下を覗き込んだんです。

そして下を覗きこんだ俺たちはもう一度、一様に黙る事になりました。橋の下には、湖に流れ込む川が闇の中飛沫を上げ、ゴウゴウと唸っているのです。

流れは急であり、人が居るとは到底思えません。それでも私達は信じられない思いで、黒い川を見つめ続けていました。

そんな硬直した雰囲気を破ったのが、Kの「何でここに投げ捨てたビンが、戻ってくるんだ?」と言う言葉でした。

そして低い声で「やばくないか?」と続けたのです。

それにはその場にいた皆が感じていたことでした。運転をしてきた友人が「急げ!車に乗れ!」と発した事により私達は一目散に車に乗り込みました。

急いで車を発進させ、その場を離れる事だけを考え運転をしている友人を「急げ急げ」と急かしました。

そして橋を中腹ほどまで渡った時でしょうか車の屋根の上に何かが当たり音がしたんです。

「カツン」「カン」「コン」って。

もう何も言わなくても屋根に何が当たってるのか分かりました。ビンと一緒に捨てたビールの空き缶。それ以外考えられません。

皆酔いなんかとっくに冷め、真っ青な顔でまんじりともせず、事が過ぎるのをただただ待つだけでした。

そして橋を渡りきる頃にその音も止み、我々もほっとする事が出来たのです。

関連記事

山中の少女

1926年、とある県境の山中にて、14歳ぐらいの少女が発見された。 その少女は、誰も触れることが出来ず、自ら動くこともなかった。 まさに狐につままれたような不思議な現象に誰…

海(フリー写真)

海ボウズ

俺の爺ちゃんの話。 爺ちゃんは物心が付く頃には船に乗っていたという、生粋の漁師だった。 長年海で暮らしてきた爺ちゃんは、海の素晴らしさ、それと同じくらいの怖さを、よく寝物語…

手伝うよ

私が通学する駅は自殺の多い駅だ。 そのせいか、電車の急停止が多い。 急停止が多いあまり、学校や会社に遅れても「電車が」「自殺があって」と言えば遅刻扱いにならず、受験は余った…

星空

夜の合宿地での不思議な出会い

私たちの高校には天文部という小さな部活がありました。 夏と言えば、ペルセウス座流星群を観測する合宿が恒例となっていました。 ある年、合宿地として選んだのは、都会の喧騒から…

田舎の駅(フリー素材)

きさらぎ駅の立て札

皆さんは「きさらぎ駅」という名称を聞いたことがありますか? これは数年前、インターネット上の2chで話題になった都市伝説で、ある方が実在しないとされるこの駅に迷い込み、その後行…

スローになる空間

友達の家に手応えのある変な空間がありました。 何もないところで手をふると、そこだけスローになる。 それは空中に留まっており、撫で回してみるとバスケットボールぐらいの大きさ。…

死に際に現れる黒い人

最近ネットで読んだのですが、人間が死にそうになっている時、それを助けたりする謎の人物が現れるそうです。 それは死んだ兄弟や親類であったり、声だけであったりするそうですが、正しい逃…

高架下(フリー写真)

夢で見た光景

数ヶ月前の出来事で、あまりにも怖かったので親しい友達にしか話していない話。 ある明け方に、同じ夢を二度見たんです。 街で『知り合いかな?』と思う人を見かけて、暇だからと後を…

ビルの隙間

去年の夏休みの事。 夜中にコンビニへ行き、いつも通る道を歩いていると、ビルとビルの間に1メートルくらいの隙間があるのを発見した。 俺は『こんな所に隙間あったっけ?』と思った…

隠し部屋

20年以上前の話なのですが聞いてください。 友人が住む三畳一間月3万円のアパートに遊びに行ったときのことです。冬の寒い日でしたが、狭い部屋で二人で飲んでいるとそこそこ快適でした。…