繋ぎ目

Parallel_Postulate

中学生の頃の夏の話。

そろそろ夏休みという時期の朝、食事を終えてやっとこ登校しようと、玄関に向かったんだ。

スニーカーのつま先を土間でとんとんと調整しながら引き戸の玄関をガラガラって開けたら、そこが玄関だった。

玄関から出たはずなのに、目の前には土間があり、さっきまで自分がいた玄関がそこにある。

不思議に思いながらも、遅刻するから急ごうとそのまま後ろを振り向いたら、そこも玄関。うちの玄関と玄関が引き戸一枚で繋がってる状態。

そんな訳が解らない状態に不安になって、2つの土間を行き来しながらどうしたらいいか考え、とりあえず玄関をいったん閉めてみたんだ。

それでもう1回玄関を開けたら、そこは普通に外だったんだけどさ。

でも多分、俺は逆の玄関の方から外に出ちゃったんだよね。

それから何か全部微妙に違う。

友達に里中なんていなかったし、北海道なんて県なかったし、「む、あ、い」こんなひらがなは存在しなかった。信号は赤・白・紫だったし、中国・韓国・台湾・北朝鮮は1つの国だったし、ハワイは日本の領土だったし、なんか違うんだよ。

もう慣れちゃったけど。

関連記事

縁側

猫が伝えようとした事

俺が人生で一度だけ体験した不思議な話です。 俺の住んでいる所は凄い田舎。数年前にローソンが出来たけど、周りは山に囲まれているし、季節になると山葡萄が採れ、秋には庭で柿が採れるよう…

異なった世界のスイッチ

アサガオが咲いていたから、夏の事だったと思う。 私は5歳で、庭の砂場で一人で遊んでいた。 ふと顔を上げると、生け垣の向こうに着物姿の見知らぬお婆さんがニコニコして立っている…

光(フリー素材)

異世界に続く天井裏

俺のクラスに新しく転入生の男子が来た。 彼はいつも机に突っ伏して塞ぎ込んでいて、未だに友人は一人も出来ていないようだった。 きっとクラスに馴染めずに大変なんだろうと考えた俺…

真っ白ノッポ

俺が毎日通勤に使ってる道がある。田舎だから交通量は大したことないし、歩行者なんて一人もいない、でも道幅だけは無駄に広い田舎にありがちなバイパス。 高校時代から27歳になる現在まで…

体育館

球状の異物

9年前、私が20歳で初めて選挙に行った日のことです。投票所は私の母校である小学校の体育館で、卒業式以来の訪問でした。体育館に入ると、記憶と違って狭く感じ、「こんなに狭かったかな?」と…

マスク(フリーイラスト)

空白の友人

偶に記憶の空白が訪れる。 正確に言うと、「気付いたらいつの間にか数時間が経過していた。そして、ついさっきまで自分が何をしていたのかが判らない」というものなんだけど。 まあ、…

着物の少女

毎年夏、俺は両親に連れられて祖母の家に遊びに行っていた。 俺の祖母の家のある町は、今でこそ都心に通う人のベッドタウンとしてそれなりに発展しているが、二十年ほど前は、隣の家との間隔…

縁側

ずれた世界

私が小学校に上がる前の夏の終わり頃の話です。田舎にある母方の祖父母の家で、昼寝をしていました。目が覚めたとき、喉が渇いていることに気づきましたが、同時に何かがおかしいと感じました。何…

降りなくていいんですか?

東京の地下鉄乗ったんだよ。 何線かは言わないけど、まぁいつ乗ってもそれなりに人乗ってるよな。 で、東京の地下鉄ってのは2~3分走れば止まるじゃん?駅の距離短いし…。快速とか…

渓流(フリー写真)

殺生

秋田・岩手の県境の山里に住む元マタギの老人の話が、怖くはないが印象的だったので投稿します。 その老人は昔イワナ釣りの名人で、猟に出ない日は毎日釣りをするほど釣りが好きだったそう…