魔法の絆創膏

猫の親子(フリー写真)

俺がまだ幼稚園生だった頃の話。

転んで引っ掻き傷を作って泣いていたら、同じクラスのミヤちゃんという女の子に絆創膏を貰ったんだ。

金属の箱に入ったもので、5枚くらいあった。

ミヤちゃんは「全部あげる。無駄使いしちゃだめよ」と言って渡してくれた。

家に帰ってお袋に「絆創膏? 怪我したの?」と言われたので、剥がして見せた。

怪我なんてどこにも見当たらない。不思議だったけど、絆創膏のパワーだと信じた。

何日か経ち、朝御飯の時に自分のお気に入りの茶碗にヒビが入っているのを発見。

ガキの浅知恵で、ヒビに絆創膏を貼ってみたんだ。

そしたら、夕飯の時に剥がすと綺麗さっぱり直っていた。

次いで手押し車にアヒルが付いている玩具。

アヒルの首が取れちゃったんだけど、絆創膏を貼っておいたらやっぱり直った。

『大切に使わなきゃ』と流石に絆創膏の重要性に気付いた矢先、うちの猫のヤーヤが車に轢かれた。

残っていた絆創膏を全部貼って毛布を掛け、幼稚園を休んで看病した。

いつの間にか泣き疲れて寝てしまった俺は、ヤーヤに顔を舐められて目を覚ました。

そしたら何事も無かったかのように治っていたんだ。傷痕すら残っていない。

明日、幼稚園に行ったらミヤちゃんにお礼言わなきゃ。

「絆創膏くれてありがとう」と。

幼稚園に行って気が付いた。ミヤちゃんなんて女の子は居ない。

絆創膏を貰った時以外に彼女を見たことなど無かった。

それなのに僕は彼女を見た時、何故だかミヤちゃんだと思った。

そう言えば、ヤーヤを産んですぐに死んでしまった母猫もミヤという名前だった。

関連記事

知らない女の子

東日本大震災での被害はほとんどなかったものの、津波で水をかぶった地域。 地震発生後、町内で一番高いところにある神社に避難していく途中、見慣れない女の子が猫を数匹抱えて走る姿を数多…

河川敷

人形と祈り

私は東京で働き、家庭を持っていた。 しかし二年前、重い病を患い、入退院を繰り返す中で、ついに会社を解雇された。 それが主な原因となり、ほかにも様々な事情が重なって、妻とは…

命の大切さ

つい最近の出来事です。 職場で色々あって、自殺未遂しちゃったのね。 それで気分転換のため田舎に帰省したんだ。もちろん自殺未遂のことは秘密にして。 すると、信心深いばあ…

箪笥(フリー写真)

形見の箪笥

高校時代の英語教師に聞いた話。 解り易い授業と淡々としたユーモアが売りで、あまり生徒と馴れ合う事は無いけれど、なかなか人気のある先生でした。 ※ 昔、奥さんが死んだ時(話の枕…

秘密

小学四年生の時の話。 当時、俺は団地に住んでいた。団地と言っても地名が○○団地というだけで、貸家が集合している訳じゃなく、みんな一戸建てに住んでいるような所だった。 既に高…

田舎の夏の風景

お稲荷さんに魅入られ

今からおよそ十年前のことです。 私は、父の田舎であるN県の山間部を訪れました。夏の帰省で、親戚一同が集まっており、夜には恒例のお楽しみとして、従兄弟たちと怪談話をしていました。…

妹を守るために

これは知り合いの女性から聞いたマジで洒落にならない話です。一部変更してありますが、殆ど実話です。 その女性(24歳)と非常に仲の良いA子が話してくれたそうです。 A子には3…

不気味な山道(フリー写真)

頭が無いおじちゃん

知り合いが体験した話。 彼女は幼い娘さんを連れて、よく山菜採りに出掛けているのだという。 ※ その日も彼女は、二人で近場の山に入っていた。 なかなかの収穫を上げ、下山し…

厨房(フリーイラスト)

後天性の霊感

大学時代に横浜の◯内駅前のファミレスで、夜勤調理のバイトをしていました。 一緒に働いているバイトに二名、いわゆる見える人が居ました。 その二人(AとBにします)曰く、そのフ…

社長室(フリー写真)

社長の話

以前勤めていた会社での事。 その会社は創業社長が一代で大きくした会社で、バブルの頃はかなり羽振りも良かった。 しかし所詮は個人企業。 社長も元々商売の才覚があった人…