弘法大師の涙雨

公開日: 不思議な体験

湖(フリー写真)

昔テレビで見た話。

今から20年程前、香川県民の水瓶とも言える満濃池が干ばつで干上がった。

満濃池は、かの弘法大師が築いた溜め池で、近隣に幾つもある灌漑用池が干上がる事があっても、まず干上がる事がなかった池だ。

そして干上がった満濃池から、毛布か何かに包まれた白骨死体が見つかった。

殺人事件として捜査が始まったが、一向に手掛かりが無く迷宮入りかと思われる事件となった。

この頃、地元では、

「仏さんが見つけて欲しかったんや」

「いや、満濃池に遺体を放ったんで弘法大師さんがお怒りになったんや」

などと囁かれたとの事だ。

その頃から、満濃池周辺では今までとは比べものにならないほどに幽霊の目撃談が増えた。

いずれも似た特徴を持つ女性の目撃談だった。

一方、捜査本部の方では最後の手段として、復顔(頭蓋骨に粘土を付けて生前の顔を復元する事)を試みる事になった。

その復顔を新聞に掲載したところ、岡山に住む女性から行方不明になっている自分の姉にそっくりだとの連絡が入った。

その行方不明の女性の足跡を追いかけていた刑事が、松山のスナックで働いていた事を突き止め、スナックの店主に復顔による顔を見せた。

すると間違いなくそこで働いていた女にそっくりで、いつからか行方が知れなくなった事、そして当時男と一緒に暮らしていた事を証言した。

ところが、その男の行方を追い始めてからすぐに、憔悴し切った顔をしてその男が自首して来たのだ。

聞くと、警察が自分の周辺を調べ始めた事が判ってすぐに逃亡を企てたが、その頃から自分が殺害した女が毎晩のように枕元に立って寝る事ができない、との事だった。

こうしてあれよあれよという間に迷宮入りと思われた事件が解決した。

しかし、その直後に讃岐地方に大雨が降り、それまで干上がり続けた満濃池はあっと言う間に元のように満面に水を湛えるようになった。

この雨を『弘法大師の涙雨』と呼んだ、というお話。

関連記事

踏み入るべきではない場所

私がまだ小学校低学年の幼い子供だった頃、趣味で怖い話を作っては家族や友達に聞かせていました。 「僕が考えた怖い話なんだけど、聞いてよ」と、きちんと前置きをしてからです。 特…

高架下(フリー写真)

夢で見た光景

数ヶ月前の出来事で、あまりにも怖かったので親しい友達にしか話していない話。 ある明け方に、同じ夢を二度見たんです。 街で『知り合いかな?』と思う人を見かけて、暇だからと後を…

農村(フリー写真)

神隠しの森と村の伝承

ある山村に、不思議な伝承があった。 その伝承によれば、村の奥地にある古い神社には、神隠しの力があると言われていた。 神隠しとは、神や妖怪が人間を自分の世界に連れ去ってしま…

隠し部屋

20年以上前の話なのですが聞いてください。 友人が住む三畳一間月3万円のアパートに遊びに行ったときのことです。冬の寒い日でしたが、狭い部屋で二人で飲んでいるとそこそこ快適でした。…

チクリ

大学に通うために上京してすぐのことです。 高田馬場から徒歩15分ほどにある家賃3万円の風呂なしアパートに下宿を始めました。 6畳でトイレ、キッチン付きだったので、その当時と…

行軍

爺ちゃんの従軍時代の話

子供の頃に爺ちゃんに聞いた話を一つ。 私の爺ちゃんは若い時、軍属として中国大陸を北へ南へと鉄砲とばらした速射砲を持って動き回ってました。 当時の行軍の話を聞くと、本当に辛か…

千仏供養(長編)

大学一回生の春。僕は思いもよらないアウトドアな日々を送っていた。それは僕を連れ回した人が、家でじっとしてられない性質だったからに他ならない。 中でも特に山にはよく入った。うんざり…

教室

気合の霊退け先生

私は都心に位置する名門の高校を卒業したのですが、担任の安藤先生は非常に特異なキャラクターの持ち主で、その独特な生活指導で多くの生徒たちを魅了していました。 彼の人柄は質実剛健で…

存在しない駅

当時学生だった自分は大学の仲間と大学の近くの店で酒を飲んでいた。 結局終電間近まで遊んでて、駅に着いたらちょうど終電の急行が出るところだったので慌てて乗った。 仲間内で電車…

森(フリー写真)

色彩の失われた世界

俺がまだ子供の頃、家の近所には深い森があった。 森の入り口付近は畑と墓場が点在する場所で、畦道の脇にはクヌギやクリの木に混ざって、卒塔婆や苔むした無縁仏が乱雑に並んでいた。 …