奇妙な写真
公開日: 不思議な体験
最近、バイト先の店長から聞いた話です。
その店長の兄が、10年程前に体験した事だそうです。
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その兄は当時、とある中小企業に勤めていたのだけど、まだ2月の寒いある日、同期の女の子が無断欠勤した。
休むとの連絡も無いので、上司がその子の自宅(アパートで一人暮らし)に電話をしても出ないし、携帯にかけても出ない。
次の日も欠勤したので、普段まじめな彼女が2日続けての無断欠勤とはおかしいという事で、彼女の実家に電話した。
電話に出たのはその子の母親だったが、娘からは何の連絡も無いと。
取り敢えずご両親が、その子のアパートに行って見るという事になった。
その子のアパートは実家から電車で1時間程なので、後でまた会社に連絡くれるとの事。
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それでその日の夕方、会社にその子の父親(以後Aさん)から電話があったのだが、大家さんに鍵を開けてもらい部屋に入ったところ、娘は居ないとの事。
部屋も別に荒らされている様子も無いし、書置き等も無いし、ご両親もかなり困惑している様子で、警察に届けるべきかどうか迷っているらしい。
電話の対応をした会社の上司も、誘拐などの犯罪に巻き込まれたんじゃないかと不安になったが、取り敢えずご両親に会社に来て頂いて、そこで話し合って対応を決めようという事に。
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暫くしてご両親が来社し、社長交えて話し合った結果、やはり警察に通報した方が良いと言う事になり、警察に電話した。
そして警察が来るまでの間、彼女の机やロッカーを調べて何か手がかりが無いか探そうという事になり、まずは机を調べたところ、引出しから一枚の写真が出てきた。
写真には、人で賑わうスーパーの前で、半袖のTシャツとジーンズ姿でこちらを向き、ピースサインで微笑んでいる彼女が写っていた。
いつ撮られた写真かも判らないし、今回の事に関係あると思えないのだけど、Aさんは何故か知らないが違和感を覚えたそうで、しきりに写真を見つめ考えこんでいたらしい。
そうこうしている内に警察がやって来たので事情を説明し、社員への軽い事情聴取が行われた。その後、ご両親と社長が署に同行し、捜索願いを出す事になった。
先程の写真も、警察に事情を説明したところ、何かの手がかりになるかも知れないという事で、預かってもらった。
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小さな会社がちょっとした騒ぎになりつつも何とか業務をこなし、それから2日経った日、Aさんから会社に電話があった。
娘らしき人物が警察に保護されたようなので、今から病院に行くと。
病院は彼女の実家から電車で3つほど先の駅の近くにあって、取り敢えず社からは上司と店長の兄が、その病院に向かう事になった。
病院に到着した上司と店長の兄が、病院の待合室に居た母親から話を聞いたところ、保護された人は娘で、目立った外傷も無く、やや衰弱しているだけで意識ははっきりとしているとの事。
母親もホッとしたのか、涙ぐみながら「本当にご迷惑おかけしてすいません」と平謝りだったらしい。
今ちょうど警察の人が娘に事情を聞いている最中で、面会はまだ出来ないとの事なので、上司と店長の兄も、無事で良かったとホッとして社に戻った。
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その数日後、Aさんがお礼とお詫びをかねて来社し、今までの経緯を報告してくれた。
それによると、彼女は保護されるまでの記憶が全く無いらしい。
仕事の後、帰宅して食事を摂り、入浴後睡眠したところまでは憶えているが、それからの記憶が全く無い。
気が付いたら見知らぬ住宅街の歩道を歩いていたので急に恐ろしくなり、道端で座り込んで泣いているところを、近所の人が通報して保護されたとの事。
精密検査の結果も、暴行された痕跡は勿論、目立った外傷も無く、脳にも異常は見られないが、取り敢えずあと2、3日は大事を取って入院するらしい。
まあ、でもとにかく無事で良かったと社長含め一同で話をしていたが、Aさんが「でもちょっとおかしな事があるんですよ」と切り出した。
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娘らしき人が保護されたと警察から連絡があったので、病院に急いで車で向かったのだけど、その途中で思わず「あっ!」と声を上げてしまった。
あの写真に写っていたスーパーが通り沿いに見えた。
立ち寄って確認したかったが、娘の安否が気にかかるし、取り敢えずその場は病院に急いで、夜に妻を娘の病室に置いて一人で確認しに行った。
スーパーの前の路肩に車を停め、降りて確認すると、時間も遅く閉店しているし、夜で景色は違うけど、あの写真のスーパーに間違いない。
住所を確認し、急いで病院へ戻り警察に電話して、担当の刑事さんに調べて欲しいと訴えた。
しかし今回の事については室内で争ったり拉致された形跡も無く、異性との交友トラブルも無い等、事件性が薄い上に、あの写真も今回の件との関連性は薄いので難しいとの事。
警察の対応にやや憮然とはしたけど、やはりあの写真には気になる事があったので、娘にそれとなく聞いても、そんな写真は知らないし何の事か分からないという。
それで翌日、そのスーパーをもう一度尋ねてみたが、そこで見た光景に背筋が凍ったらしい。
写真では小さく写っていて判らなかったけど、スーパーの入り口にのぼりが立っていて、そこには『2月○日~△日まで、OPEN記念セール中!』という文言が書かれてあった。
○日といえば、彼女が行方不明になった日。
店内に入り店員に話を聞くと、そのスーパーは間違いなく4日前に開店したばかりだと言う。
そんな馬鹿な話がと思いつつ、その時点でAさんが写真に覚えた違和感が判ってハッとしたそうだ。
あの写真、彼女は半袖だけど、写っている周りの人は皆ジャケットやセーターなどの防寒服を着ていたと。
それでトドメが、あの写真…一体誰が写して、いつあの子の机に入れたのか…という事。
その場の一同、唖然を通り越して絶句。
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スーパーを訪れた翌日、警察署に立ち寄って事情を話したけど殆ど相手にされず、例の写真も返却してもらった。
それで入院中の娘にその写真を見せても、やはりと言うかこんな写真は知らないし、こんなスーパー行った事も無い。
それに、こんな服はあたし持っていないという。
もう一家揃ってかなり気味が悪くなったので、写真は燃やして捨てたそうな。
ちなみに彼女はその後、元気になり無事に退院した。
しかし小さな会社でこういう騒ぎになったので流石に居づらくなって辞め、現在は父親の家業(飲食店)を手伝っているとの事。