北陸本線の夜

線路

二日前、11月6日の終電間近に北陸本線のある無人駅で不思議な出来事がありました。

音楽を聴きながら列車を待っていた私は、列車接近のアナウンスもなく突然、ホームに列車が現れたことに驚きました。「うぉっ、時刻表より10分ぐらい早いけど、ラッキー♪」と思いつつ、その列車に乗ろうとしたところ、何かがおかしいことに気がつきました。

通常3〜6両の編成が、10両以上の長い青い車体で連なっていました。列車の後ろの方はホームからはみ出すほどで、寝台列車のようでしたが、そんな列車がこの小さな無人駅に停まるはずがありません。さらに、車両は古臭く、どの窓もカーテンが閉まっており、中の様子はほとんど見えませんでした。

この列車はこの世のものとは思えなくなり、周囲に他の人がいないか確認しましたが、ホームには私一人だけでした。私は音楽の音量を上げ、この駅から列車が去ってくれることを必死に願いました。正直、半泣きだったと思います。

しばらく顔をうつむいていた私が顔を上げると、その列車はすでにホームから消えていました。後から考えると、その列車からは一切音がしなかったように思います。ヘッドホンをしていたとはいえ、完全に気づかないのは不自然です。

やがて通常の列車接近のベルとアナウンスが流れ、いつもの電車がホームに入ってきました。明るい車内にいる他のお客さんの顔を見た時の安心感は、今も忘れられません。

冷静に考えれば、ただの夜行列車が臨時で停まっただけかもしれませんが、その夜見た列車はあまりにも不自然で、本当に怖かったです。

※補足

なぜこの列車が私を誘っているのかと妄想したのは、私が立っていた位置にいる車両のドアが何故か開いており、ドアの向こうは真っ暗で何も見えませんでした。

列車の灯りが一つも点いていないのは明らかに不自然で、その真っ暗な空間に足を踏み入れたらもう戻れないかもしれないと感じ、恐怖が募りました。

北陸本線は過去に北陸トンネル事故があった路線です。事故が起こったのも11月6日。もしかしたら、私が見たのは事故に遭った「きたぐに」の幽霊列車だったのかもしれません。

関連記事

浮世絵のフリー素材

灯籠と火の玉

じいちゃんから聞いた話。 真夏の夕方、お使いの帰り道。お寺の片隅に人だかりが出来ているのを見つけた。 気になったじいちゃんは、人だかりが出来ている場所に行った。 人だ…

母からの手紙

息子が高校に入学してすぐ、母がいなくなった。 「母さんは父さんとお前を捨てたんだ」 父が言うには、母には数年前から外に恋人がいたそうだ。 落ち込んでいる父の姿を見て、…

玄関

入ってきた

数日前、普段通りリビングでテレビを見ていた夜、突然玄関のチャイムが何度も激しく連打されました。このけたたましい音にイラッとしながら玄関に向かいました。 我が家の玄関扉はすりガラ…

田舎の風景

神社にいた友達

小学生の頃、私は家の近くにある小さな神社でよく遊んでいました。 友達と集まって、境内を走り回ったり、鬼ごっこをしたり、ただただ無邪気に過ごすのが日課でした。 ある日、いつ…

抽象画(フリー素材)

夢が現実に

最近になって気付いた不思議な事。 俺は普段眠ってもあまり夢を見ない。というか実際は見ていても忘れているんだと思う。 でも、偶に夢を覚えていたりする。しかも覚えているやつに限…

ユーカリの木(フリー写真)

当世話

俺の実家のある地区では『当世話(とうぜわ)』と呼ばれるシステムがあり、それに当たった家は一年間、地区の管理を任される。 今年はその当世話がうちで、祭事に使う御社の掃除を夏に一度し…

中古車

視える娘

娘が3才くらいの時、中古で大き目の車を買いました。 私も娘も大喜びで、大きな車を楽しんでいました。 しかし数週間経った頃、娘が車に乗り込もうとした時に急に大泣き。 「…

真夜中の訪問者

私には父親が生まれた時からいなくて、ずっと母親と二人暮しでした。 私がまだ母と暮らしていた17歳の頃の事です。 夜中の3時ぐらいに「ピーー」と玄関のチャイムが鳴りました。 …

木造校舎

青い手首

ネタではありません。実際の体験談です。 世田谷区立某小学校での出来事。 ※ 入学して1年間は、戦前からある古い木造校舎で過ごしました。 2年生になった頃に木造校舎の建て…

インフルエンザウィルス(フリー素材)

高熱とアリス症候群

去年の年末、俺がインフルエンザで倒れていた時の話。 42度という人生最高の体温で、意識もあるのか無いのか分からない状態で俺は寝ていたのだが、尿意に襲われてふらふらと立ち上がった。…