ヒノジイ

田舎の風景(フリー写真)

私は小学校に通う前、田舎の祖父母の家に住んでいました。

同い年の子供どころか、祖父母以外に人を滅多に見なかったので、暇で仕方がありませんでした。

ある日、敷地内の蔵を探索することにしました。

蔵は老朽化していたのか、天井にはところどころ穴が空いていて、光が漏れ出していました。

すると蔵の一番奥の光の溜まり場に、小豆洗いに似た妖怪が居ました。

私より背が大分小さく(約 30 cm)、風貌は水木先生の描く小豆洗いです。

でも、小豆は洗っていません。

その小豆洗いから頭の中にメッセージが伝わって来て、自分のことを『ヒノジイ』と名乗りました。

ヒノジイは、精霊灯(せいれいとう)というランプのようなものを作っているとのことです。

不思議なことに、ヒノジイの喋る言葉は頭の中に文字として入って来ます。

文字ではなくテレパシー的なもので、説明がどうにも難しいです。

『精霊灯』という字も、小学校に入る前なのに読めた(感じた)のも不思議でした。

そのヒノジイは、山々の精霊の欠片を集め、山の命を繋いで行くと話していました。

私は毎日ヒノジイと会っていたはずなのに、小学校へ上がる年になると、何故かすっかり忘れてしまいました。

更に奇妙なことには、両親も私が小学校に上がるまで、どうして祖父母に預けていたか分からないそうです。

今日、たまたま年賀状の話をしていて、祖父母の蔵とヒノジイのことを思い出しました。

今年は祖父母の家へ行く予定なので、蔵を確認して来ます。

この投稿への返信:

私の地方では、憑かれやすい子供や視える子供を、一時的に田舎で過ごさせる習慣がありました。

何でも、都会よりも田舎の方が、悪い存在が居ないそうです。

大切な幼少期を平穏に乗り切れば、その後は普通に過ごせるようになるからだと聞きました。

関連記事

時計

時間を超えた警告

二ヶ月前、私が経験した奇妙な出来事をお話しします。夢だったのか現実だったのかは定かではありませんが、記憶に新しいその日の出来事をご紹介します。 ある日、私は朝10時に目を覚まし…

新聞受けから…

これは俺が2年前の6月14日に体験した本当の話です。俺が前住んでたアパートでの出来事。 その日、俺はバイトで疲れて熟睡していた。 「ガタガタッ」という異様な音で俺が目を覚ま…

猫

猫の最後のお別れ

20年前のある夏の夜のことです。私たち兄弟が夏休みを利用して祖父母の家に泊まりに行っていたときの話です。我が家にはとても可愛がられていた猫が一匹いましたが、その日は夜遅くまで帰って来…

山(フリー写真)

山の物の怪

うちの爺さんは若い頃、当時では珍しいバイク乗りだった。 裕福だった両親からの何不自由ない援助のおかげで、燃費の悪い輸入物のバイクを暇さえあれば乗り回していたそうな。 ※ ある…

病院

病院の空白

私は2年前まで看護師をしており、今は派遣事務の仕事に就いています。看護師時代は17、18時間の長時間勤務が当たり前でした。 ある日の二交代勤務中、朝7時半に病院の通用口を通り抜…

夜の海(フリー写真)

海を見たらあかん日

子供の頃の怖い体験がふと思い出されたので投稿します。 9月にうちのばあちゃんの姉(おおばあと呼んでいた)が亡くなり、一家揃って泊まりで通夜と葬式に行って来た。 実質、今生き…

田舎の風景(フリー写真)

闇をさまよう女性

ある村に伝わる不気味な伝説がある。 その名は「クギヌシ様」と呼ばれる。 どこから現れるのかは分からないが、黒い帽子をかぶった女性の姿をしており、村に悪をもたらすと言われて…

木造校舎の教室(フリー写真)

赤い扉から聞こえる声

私が小学生の頃に体験した話。 一学期に一回、クラス内で模擬店をする時間があった。 小学生にとってはお店屋さんごっこをさせられる時間でしかなかったが、他クラスが勉強をしてい…

山道(フリー素材)

上位の存在

厳密に言うと、この話は俺が「洒落にならない程怖い」と思った体験ではない。 俺の嫁が「洒落にならない程怖い」と思ったであろう話である。 俺の嫁は俗に言う視える人で、俺は全くの…

集落

時代を超える舞

私が生まれる前の出来事です。直接の体験ではないため、一部私の想像が加わっています。地名や人名はすべて仮名です。 ※ 私の生まれた村は最近、他の町と合併し、名前が変わりまし…