犯罪者識別能力

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

目(フリー素材)

高校の時の友達に柔道部の奴がいて、よく繁華街で喧嘩して警察のお世話になっていた。

そいつは身長185センチで体重が100キロという典型的な大男。名前はA。

性格は温厚で意外と気弱。気は優しくて力持ち。いや、優しすぎる。間違っても一般人に手を出す気性じゃない。

しかしそいつは、何度も喧嘩して相手に怪我を負わせても、停学や裁判になった事はない。

それは何故か? 答えは喧嘩の相手が全員犯罪者(又は指名手配者)だったから。

一度だけその現場を見てしまった。

帰り道に繁華街(歌舞伎町のような治安の悪い場所)があり、そこで急にAが足を止める。

Aの目線の先には中年のオヤジがベンチで新聞を読んでいる。

俺は何かあったのかと問い掛けるが、Aは無視する。しかも見た事も無いような鬼の形相。

これはおかしいと思い、Aの腕を掴んで問い掛けるが振り払われた。

そしてAは低く呻くような声で言った。

「あのオヤジ…ムカつく!」

何を言っているのか理解できず、オロオロしている間にAは凄い勢いでオヤジに近付いて行く。

オヤジがAに気付き顔を上げた瞬間、Aの蹴りがオヤジの顔に炸裂。

ベンチから転げ落ちるオヤジの髪を掴んで立たせ、右手で張り手を食らわせ投げ飛ばす。

仰向けに倒れている親父に押さえ込みをかける。

20人くらいの野次馬を掻き分けて俺がAに飛び付く。

柔道の有段者に押さえ込まれると呼吸が出来ないらしく、オヤジは軽い失神状態。

やっとの思いでAを引き剥がし、落ち着かせようとしていると警察到着。

警察に付き添われながらパトカーに乗せられ、俺も一緒に乗る。

俺とAは派出所の椅子に座らされ、色々と話を聞かれていた。

Aが暴行を働いた動機は、

「オヤジが無性にムカついた。気が付いたら飛び掛かっていた」

というもの。

警官に嘘を吐くなと怒られていたが、Aは下を向いてそればかり繰り返す。

1時間ほど経った頃、電話が鳴って警官が取る。

電話の内容を聞いて警官が驚いていた。

オヤジは覚醒剤の売人。オヤジ自身も覚醒剤を使用していて、過去に逮捕歴あり。

最近では婦女暴行の容疑者として警察が追っていた。

オヤジのバッグの中には覚醒剤・注射器・包丁が入っていた。

本来なら傷害罪で逮捕のはずが、Aは無罪でしかも感謝状まで貰えた。

もちろん、Aはオヤジが犯罪者とは全く知らなかった。

関連記事

葛飾北斎(フリー浮世絵素材)

カゴカキ

昔から続く怪異。 愛知県○○市。その昔、少なくとも200年以上前の話。 岡崎城の城下町は、天下を二分するほど賑わっていたらしく、駕籠を担いで人を運ぶ『カゴカキ』と呼ばれる人…

廊下(フリー写真)

放課後の部室で

うちの高校の演劇部の部室での事。 私は当時、演劇部の部長だったので、一人で遅くまで部室に居る事があった。 ある日、いつものように部室に残っていたら、ふと人の気配を感じた。 …

版画(フリー素材)

婆ちゃんの戦時中の話

昔、婆ちゃんから聞いた戦時中の話を一つ。 第二次世界大戦中、うちの婆ちゃん(サノ)が10歳の頃の話です。 ※ 婆ちゃんはお姉さんと避難のために親元を離れ、田舎の遠い親戚の家に…

兄弟(フリー写真)

兄が進む道

私の兄は優秀な人間でしたが、引き篭もり癖がありました(引き篭もりという言葉が出来る前のことです)。 生真面目過ぎて世の中の不正が許せなかったり、自分が世界に理解してもらえないこと…

小さな鍾乳洞

少し昔……と言っても15年以上前の話になる。 俺の地元には小さな鍾乳洞がある。 田んぼと山しかないド田舎だったので、町としても鍾乳洞を利用して観光ビジネスを興そうとしたらし…

きよみちゃん

私が小学校三年生の時の話です。 そのころ、とても仲よしだった「きよみちゃん」という女の子がクラスにいました。 彼女と私は、学校が終わると、毎日のようにお互いの家を行き来して…

セブンイレブン

未来のお店

俺が6歳の頃の話。当時の俺は悪戯好きで、よく親に怒られていた。 怒られたら泣きながら「こんな家出てってやるー」と言って家出し、夕御飯には帰って来るということがよくあった。 …

牛(フリー写真)

ミチ

私の母の実家は一度、家が全焼してしまう大火事に遭いました。 当時住んでいたのは、寝たきりのおばあちゃんと、母の姉妹6人だけ。 皆が寝付いて暫く経った頃、お風呂を沸かすために…

桜(フリー写真)

初めまして

うちの母方の婆ちゃんの話。 母方の爺ちゃんと婆ちゃんはアメリカ人で、うちの父は日本人、母はアメリカ人。 出張でアメリカに来ていた父と母は恋に落ちた。 交際は当時、無茶…

教室

時間が停止した昼休み

小学生の時、昼休みの校庭で不思議な体験をした。 ある日、校庭で10秒間、周囲がまるで1/10秒シャッターで撮影されたように完全に静止した。 ただ止まったというよりは、慣性…