五回目の人生

桜(フリー写真)

俺には高校時代からの親友Aがいる。

高校時代の当時、Aの自宅には、Aの従兄弟で大学生であるBさんが居候していた。

Aの父親が、Aの大学受験の勉強を見てもらう事を条件に、地方出身のBさんの居候を許可したらしい。

俺はAの家に遊びに行くのが日課だったのだが、徐々にBさんを交えての勉強会になって行った。

Bさんの彼女であるCさんが英文学部だったため、英語だけはCさんに見てもらった。

勉強後、よく四人で進学大学の相談や、将来の職業について話し合った。

勉強会の成果もあって俺とAは第一志望の大学に受かり、BさんとCさんは大学を卒業し、就職一年目で結婚した。

俺とAは大学は違うものの、月に数回は遊ぶ関係が続き、年に数回はBさんCさん夫婦宅にも遊びに行った。

数年後に俺とAは就職し離れた土地へ。それでも里帰りする度にAと会い、年間行事のようにBさんCさん宅に遊びに行った。

しかし四人揃ったのは、今年の正月が最後だった。

今年の春、Cさんは急病で亡くなったのだ。

俺は今年の旧盆、AとBさん宅へお線香を上げに行った。

その際、Bさんから驚くべき話を聞いた。

Cさんが亡くなる前、意識不明状態から奇跡的に意識が戻り、

「伝えたい事がある」

と言い出した。

Cさん「私ね、五回人生をやり戻しているの」

Bさん「えっ?」

Cさん「でもね、人の寿命は変えられないの」

Bさん「お前、大丈夫か?」

Cさん「毎回、信じてもらえないけど、これか私にとって事実なの。

一回目では、Bと大学時代に恋人同士にはなれなくて、二人とも違う相手と結婚。そして二人とも離婚。で、二人は離婚後に再会し結婚。

二回目からは猛アタックして貴方と結婚し、子供を産む事は出来たけど、病死。

三回目も結婚し、子供は病気をする事なく育ったけど、事故死。

四回目からは子供を失う悲しさから逃れたいから、子供は作らなかったの。

そして今回は、四回目までの経験から自分の死の原因を事前に回避していたので、亡くなる事は無いと思ったけど、原因不明の病。

私、死んでもまた時間を溯って、貴方が大学生の時に会って来るよ」

その後、Cさんは亡くなってしまった。

Bさん曰く、

「Cの話した事は、何かのドラマを元にした嘘の話かもしれない。

しかし生きている時間は違っても、元気ならそれで良い」

と話していた。

関連記事

茶封筒

不思議な預かり物

これは大学の先輩が体験した実話。 その先輩は沖縄の人で、東京の大学の受験のため上京していた時のこと。 特に東京近郊に知り合いもいなかったので、都内のホテルに一人で宿泊してい…

満月(フリー画像)

天狗

35年前くらいの事かな。俺がまだ7歳の時の話。 俺は兄貴と2階の同じ部屋に寝ていて、親は一階で寝ていた。 その頃は夜21時頃には就寝していたんだけど、その日は何だか凄く静か…

図書室(フリー写真)

本に挟まったメモ

高校3年生の時の話。 図書館で本を借りたら、本の中に 『こんにちわ』 と書かれたメモが入っていた。 次の週にまた別の本を借りたら、 『こんにちわ。このまえ…

異なった世界のスイッチ

アサガオが咲いていたから、夏の事だったと思う。 私は5歳で、庭の砂場で一人で遊んでいた。 ふと顔を上げると、生け垣の向こうに着物姿の見知らぬお婆さんがニコニコして立っている…

廃屋の窓(フリー写真)

半分の家

じいちゃんから聞いた話。 従軍中、幾つか怪談を聞いたそうだ。その中の一つの話で、真偽は不明。 ※ 大陸でのこと。 ある部隊が野営することになった。 宿営地から少し…

田舎の夜(フリー写真)

田舎の不思議な行事

これは今から約15年前、南伊豆の小さな村で私が実際に体験した、怖いと言うより少し不思議な話です。 小学3年生の夏。私たち家族(父・母・私)は、お盆休みを伊豆のK村という場所で過…

古民家(フリー写真)

木彫りの仏様

母方の祖母が倒れたという電話があり、家族で帰省した時の話です。 祖母は倒れた日の数日後、うちに遊びに来る予定でした(遠方に住んでいるため滅多に来ません)。 その遊びに来るこ…

有名な家

もうかれこれ10年前の話。当時、まだ自分は9歳だった。 諸事情で祖母と二人暮らしをしていたが、小学生半ばの頃に母親とも一緒に暮らすことになった。 それまで祖母とは小さな漁師…

縁側

猫が伝えようとした事

俺が人生で一度だけ体験した不思議な話です。 俺の住んでいる所は凄い田舎。数年前にローソンが出来たけど、周りは山に囲まれているし、季節になると山葡萄が採れ、秋には庭で柿が採れるよう…

時空(フリー画像)

祖母のタイムスリップ体験

祖母が体験した不思議な話。 まだ終戦後のバラック住まいの頃、生活物資を買いに市へ出掛けたんだそうな。 所々にバラック小屋が建っているだけの道を歩いていた時、急に辺りの様子が…