ばあちゃんのまじない
部活の合宿で、他の学校の奴も相部屋で寝ていた時の事。
ある奴が急に魘され、布団の上でのた打ち回り始めた。起こそうとしても全然起きない。そのまま魘され続ける。
起きている奴等でどうするか話し合っていると、今まで寝ていた変な奴が起きた。
そいつは布団の上をモソモソと四つん這いで移動し、魘されている奴の近くまで行った。
そして人差し指と中指を立て、寝ている奴の上を「チョイ」と何かを切るように一回払った。
次いで指をチョキの形にして、またも体の上を数回「チョキチョキ」と切るような仕草をした。
すると奇妙な事に、それまで魘されていた奴の眠りが急に穏やかになった。
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その変な奴は、眠そうにまたモソモソと自分の布団に戻り寝てしまったのだが、俺達は不安になって魘されていた奴を起こしてみた。
それで話を聞いてみると、
「あかんねん…、何か海の中に居てな、白い物が一杯絡み付いてくるんよ。俺、泳げたはずなのに、どんどん絡まるんよ。
息も出来ないし必死で足掻いてたんだけど、急に懐からナイフと鋏が出てきて、白いものが切れて助かったんよ…」
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明くる朝、変な奴に話を聞いてみると「あー…ばあちゃんから習ったまじない」とだけ言った。
合宿はつつがなく終わったが、何とも奇妙な出来事だった。