鈴の音
公開日: 心霊ちょっと良い話
小学生の頃、大好きだったばあちゃんが死んだ。
不思議と涙は出なかったのだけど、ばあちゃんが居ない部屋は何故か妙に広く感じ、静かだった。
火葬が済んだ後、俺は変な気配を感じるようになった。
テレビを視ている時、トイレに行く途中の廊下、誰かが俺を見ているようだった。
何となく『ばあちゃんだな』と思ったけれど、その時は別に気に留めなかった。
※
次の日、眠りに就こうと布団に入りウトウトしていると、突然金縛りに遭った。
金縛りは初めてだったので、かなり驚いていると、ドアの方から鈴の音が聞こえて来て、段々こちらの方へ音か近付いて来る。
目を開けるのが怖かったので頑なに目を閉じていたけれど、目の奥にばあちゃんの姿が見えた。
馬鹿な俺はその時パニック状態になり、
『何故可愛がってくれた俺をこんな怖い目に遭わせるんだ』
と心の中でばあちゃんを貶し続けた。
すると目の奥のばあちゃんは少し悲しそうな顔をして、鈴の音が小さくなると共に消えて行った。
金縛りが解けた後は、怖かったので布団に潜り眠った。
※
次の日の朝、何となくばあちゃんの部屋に入り、一緒に折った折り紙の鶴などを眺めていた。
昨日の出来事を思い出したりして、ばあちゃんは何がしたかったのだろうと考えていたら、咄嗟にある事を思い出した。
あの鈴の音。
ばあちゃんの財布に付いていた、鈴の付いたヒモ。
俺はとっさにタンスを開けて、ばあちゃんの財布を取り出した。
財布の中には、少しのお金と封筒。
その封筒を開けてみると、便せんに癖のある字でこう書かれていた。
『甘いものばかり食べていると虫歯になるから控えなさいね。
テレビゲームのやり過ぎもほどほどに。
おばあちゃん、いつもお前の事を心配して見守っているからね。
少しだけどこのお金で何か買いなさい』
昔の千円札が一枚入っていた。
※
あの時、ばあちゃんは、これを渡したくて俺の部屋に来たのだろうか。
そんな事も知らずにばあちゃんを貶した自分。
あの時の悲しそうな顔をしたばあちゃん。
俺はばあちゃんが死んでから初めて泣いた。