白いマフラー

公開日: 心霊ちょっと良い話

戦闘機(フリー写真)

俺のじいちゃんは昔、パイロットだった。

若い頃のじいちゃんの写真は、白のマフラーを巻いて格好つけていて、でも本当に格好良かった。

俺もじいちゃんみたいな戦闘機乗りになりたかったけど、適性がなく結局は整備員になってしまった。

それで腐っていた俺にじいちゃんは、

「整備員はパイロットの命を預かってるんだからな、しっかりやれよ」

と励ましてくれた。

そんなじいちゃんも亡くなり、俺が初めて整備担当の飛行機を持った時、俺が整備した飛行機が空中で故障した。

パイロットから「コントロールが効かない」との連絡が入り、緊急着陸することになった。

でも着陸は一番難しい操作なので、大丈夫かと心配していたが、案外すんなりと着陸した。

飛行機を収容して不良箇所を探したが、異常な所はなく首を捻っていると、パイロットが来て言った。

「操縦が効かないって言った後に、俺の隣に人が居たんだ。

お前によく似て、パイロットみたいな格好してて、白のマフラー巻いてた。

その人が『大丈夫、ワシの孫の整備した飛行機じゃ。必ず無事に降りる』って言うんだよ」

それを聞いて、俺は持ち歩いているじいちゃんの写真を見せたら、

「ああ、この人。お前、いいお祖父さん持ったな」

と言ってくれた。

それ以降、

「あいつの整備した飛行機は落ちない」

と評判になり、パイロットからの信頼も得ることが出来た。

お陰で今も整備士やっています。

関連記事

バー(フリー写真)

見えない常連さん

俺が昔、まだ神戸で雇われのバーテンダーだった頃の話。 その店は10階建てのビルの地下にあった。 地下にはうちの店しかないのだけど、階段の途中にセンサーが付いていて、人が階段…

犬(フリー素材)

犬の気持ち

俺が生まれる前に親父が体験した話。 親父がまだ若かった頃、家では犬を飼っていた。 散歩は親父の仕事で、毎日決まった時間に決まったルートを通っていたそうだ。 犬は決まっ…

愛猫の最後の挨拶

うちの両親が体験した話。 もう20年も前の夏のことです。 私達兄弟が夏休みを利用して祖父母の家に泊まりに行っていた夜、当時とても可愛がっていた猫がいつまで経っても帰ってこな…

糸と縫い針(フリー写真)

祖母の糸切りばさみ

20年程前の話。田舎で祖母が亡くなった時のこと。 母方の実家は地元では名士で、医者でも教師でもないのに、祖父は周りから先生と呼ばれていた。 そういう人なので、あちこちに愛人…

太陽の光(フリー写真)

わたしの靴がないの

従姉妹が19歳という若さで交通事故に遭い、亡くなりました。 それから半年ほど経った頃、夢を見ました。 従姉妹の家に沢山の人が訪れ、皆それぞれ食事をしながら談笑しています。 …

カップル(フリー素材)

恋人との思い出

怖いと言うより、私にとっては切ない話になります…。 私が高校生の時、友達のKとゲーセンでレースゲームの対戦をして遊んでいました(4人対戦の筐体)。 その時、隣に二人の女の子…

田舎の夏

夏の約束

夏が近づくと、ふと思い出すことがある。 中学生だったある夏の日、私は不思議な体験をした。 当時、世間の同世代が夏休みを謳歌する中、私はサッカー部の一員として遠征続きの毎日…

台所(フリー写真)

おばあちゃんの料理

十年以上寝たきりで、最後の方は痴呆になってしまっていたおばあちゃん。 帰省してお見舞いに行った時、私の名前も分からなくなった祖母の傍にいるのが辛くて、 「もういいよ」 …

ラグビー(フリー写真)

先輩の分まで

大学に入学してすぐにラグビー部に入った。 入部するなり、ある4年生の先輩に 「お前は入学時の俺にそっくりだ」 と言われた。 その先輩は僕と同じポジションだった。…

民宿の一室(フリー写真)

あの時の約束

長野県Y郡の旅館に泊まった時の話。 スキー場に近い割に静かなその温泉地がすっかり気に入り、僕は一ヶ月以上もそこに泊まったんです。 その時、宿の女将さんから聞いた話をします。…