おばあちゃんの料理

公開日: 心霊ちょっと良い話

台所(フリー写真)

十年以上寝たきりで、最後の方は痴呆になってしまっていたおばあちゃん。

帰省してお見舞いに行った時、私の名前も分からなくなった祖母の傍にいるのが辛くて、

「もういいよ」

と言って病室を出てしまった。

しかし、次の日に母から

「おばあちゃんがアンタに会いたがっている!」

という電話を受け、その週末に帰るつもりでいた。

そんな週の半ば、昼寝をしていると台所で何やら音がした。

誰かが歩いて床が軋む音、食器同士が擦れるカチャカチャという音。

あまりにも長く続くものだから気のせいではない。

『泥棒だ!』と思い、台所の戸を開けた。

しかし、そこには誰も居なかった。

寝ぼけていたのかと思い、もう一度布団に戻った。

暫くして電話が鳴った。

「おばあちゃんが死んじゃったよ」

と…。

容態が急変したらしい。

おばあちゃんの作る料理が大好きだった私。

最期に何か作りに来てくれたのかな。

夢でもいい。また台所に来てくれてもいい。私がそっちに逝った時でもいい。

「あの時は『もういいよ』なんて言ってごめんね。大好きだよ」と伝えたい。

関連記事

日本酒(フリー写真)

クジ引き

この前、近所の商店街のイベントでクジを引いた。 買い物をすると貰えるクジ引き券を数枚集めて引くあれだ。 『三等のスポーツ自転車が欲しいな~』なんて考えながら箱に手を入れて…

眼鏡

眼鏡の思い出

祖父が生前、私たち家族には常に厳しい人でありながら、時折見せる優しさとともに存在感を放っていました。 彼が亡くなった後、家族として彼を失った悲しみが心の隅に深く残っていました。…

おばあさんの手(フリー写真)

嫁姑

10年程前、祖母が死去。死因は肺炎。寝たきりの老人の方には多いらしい。 祖母は亡くなる三年程前から痴呆が始まり、徘徊したり家中で排泄したり大声を出したり、それは大変だった。 …

民宿の一室(フリー写真)

あの時の約束

長野県Y郡の旅館に泊まった時の話。 スキー場に近い割に静かなその温泉地がすっかり気に入り、僕は一ヶ月以上もそこに泊まったんです。 その時、宿の女将さんから聞いた話をします。…

四つ葉のクローバー(フリー素材)

おじさんの予言

あれは11年前、某ビール会社の販促員のパートをしている時に、ある酒屋に伺った時のことです。 二回目にその酒屋へ訪問の際、お店の娘さんに 「あなたに膜のようなものが掛かって見…

戻って来たお手伝いさん

おばあちゃんに聞いた、ささやかな話。 母と二時間ドラマを見ていて、「お手伝いさんの名前って大抵○○やねえ」と言ったら、 母が「そういやママが子供のころにいたお手伝いさんの一…

旅館(フリー素材)

お気遣い

私は趣味で写真を撮っています。 主に風景ばかりで、休みが取れた時は各地を回っているのですが、その時に宿泊した民宿での体験です。 ※ その日、九州の方に行っていたのですが、天候…

夫婦の手(フリー写真)

あの世とこの世

若くして亡くなった夫は、美術的な才能のある人でした。 でも息子は小学生の頃から図画の授業は全然ダメ。 その点は父親に似なかったんですね。顔も似ていません。 性格はよ…

妹を守るために

これは知り合いの女性から聞いたマジで洒落にならない話です。一部変更してありますが、殆ど実話です。 その女性(24歳)と非常に仲の良いA子が話してくれたそうです。 A子には3…

渓流(フリー写真)

川辺で会ったおじさん

小学5年生の頃、隣のクラスに関西からの転校生S君が来た。 ある日の昼休み、体育館の片隅でS君がクラスの野球部数名から小突かれたりして虐められているのを発見した。 俺は当時、…