
十年以上寝たきりで、最後の方は痴呆になってしまっていたおばあちゃん。
帰省してお見舞いに行った時、私の名前も分からなくなった祖母の傍にいるのが辛くて、
「もういいよ」
と言って病室を出てしまった。
しかし、次の日に母から
「おばあちゃんがアンタに会いたがっている!」
という電話を受け、その週末に帰るつもりでいた。
※
そんな週の半ば、昼寝をしていると台所で何やら音がした。
誰かが歩いて床が軋む音、食器同士が擦れるカチャカチャという音。
あまりにも長く続くものだから気のせいではない。
『泥棒だ!』と思い、台所の戸を開けた。
しかし、そこには誰も居なかった。
寝ぼけていたのかと思い、もう一度布団に戻った。
暫くして電話が鳴った。
「おばあちゃんが死んじゃったよ」
と…。
容態が急変したらしい。
※
おばあちゃんの作る料理が大好きだった私。
最期に何か作りに来てくれたのかな。
夢でもいい。また台所に来てくれてもいい。私がそっちに逝った時でもいい。
「あの時は『もういいよ』なんて言ってごめんね。大好きだよ」と伝えたい。
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