涙雨

公開日: 心霊ちょっと良い話

雨(フリー写真)

親父の葬式の時の話。

告別式の最中、心の中で親父に語りかけていた。

『親父、まだ上には行ってないだろ。側に居るなら蝋燭を揺らしてみてくれ』

すると壇上の蝋燭が激しく揺れ始めた。

俺が居た位置と蝋燭との距離は3メートル程。少なくとも俺は風など全く感じなかった。

それから暫く蝋燭は揺れ続けていた。

『わかった、もういい』と心の中で語りかけると揺れは収まった。

それから暫く色々心の中で質問していた。

『Yes』なら揺らす、『No』なら何もしない、という語りかけもしていた。

それも毎回的確な返事が貰えていた。

そんなこんなをしていて、今度は心の中で別れの挨拶をした。

今までの事、これからの事、色々語った。

最後に『ありがとう』と心の中で囁いた時、急に雨が降ってきた。それもかなりの土砂降りである。

そしてその後は蝋燭は揺れなくなった。

それまで空は晴れていて、雨が降る感じなど全く見せていなかった。

その雨は告別式が終わるまで続いた。

そして終わった途端にまた見事なまでに晴れ渡った。およそ30分のきつい雨であった。

季節は7月。夕立などの短時間の雨が多い時期ではあるが、朝の10時ぐらいに夕立というのは珍しい。

やはり親父の涙であったと思いたい。

蝋燭が揺れなくなったのは成仏できたからだと思いたい。

まあ、こんな俺はオカルト否定派ですが…蝋燭も雨もたまたまなんだろうと思う。

でも、信じたいのです。

関連記事

公園のブランコ(フリー写真)

友人を見守る人

これは俺が小学二年生の時の話です。怖くはないのですが、良ければ読んで下さい。 その日、自転車でブラブラしていた俺は、小さな公園があるのを発見した。 ブランコと滑り台、それと…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。 田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…

ビル(フリー写真)

お迎え

二ヶ月前、以前在籍していた会社の社長が亡くなった。 就職の決まらなかった私を拾ってくれて、生まれて初めての『回らない寿司』を食べさせてくれた。 癌で入院しているのは知って…

千羽鶴(フリー写真)

お見舞い

俺は中学と高校の時、寮に入っていた。その時の出来事。 その寮では夜に自習時間というのがあり、自習は自習棟という、宿泊棟とは別の建物で行われていた。 ある日、Tという後輩が自…

空(フリー写真)

爺さんの教え

学生の時、爺さんが末期癌でこの世を去った。 悲しかった。ただ、葬式では泣かなかった。泣けなかった。 「人前で泣くな」 が爺さんの教えだったから。 ※ 数日後、母か…

満開の桜

桜の木の下のふたり

夏の間はご無沙汰していたが、普段の休日には、近所の小さな公園によく足を運んでいた。 住宅街の真ん中にひっそりとあるその公園には、鉄棒とブランコ、そして砂場があるだけで、子どもの…

太陽の光(フリー写真)

わたしの靴がないの

従姉妹が19歳という若さで交通事故に遭い、亡くなりました。 それから半年ほど経った頃、夢を見ました。 従姉妹の家に沢山の人が訪れ、皆それぞれ食事をしながら談笑しています。 …

腕時計と街(フリー写真)

四十九日の夢

俺が大学生だった頃の話です。 念願の志望校に入学したものの自分の道が見い出せず、毎日バイトに明け暮れ、授業など全然受けていなかった。 そんなある日、本屋で立ち読みをしている…

携帯電話を持つ女性(フリー写真)

家族からの電話

これはある一人暮らしの女の子が、うつ病になった時に体験した不思議な話です。 その女の子は人間関係が原因で仕事を辞め、殆ど引き篭もり状態になり、毎日死にたいと思うようになっていたそ…

蝋燭(フリー写真)

お地蔵さん

私の地元では年に2回「お地蔵さん」という行事と言うか、お寺のお参りイベントみたいものがあるんです。 あるお寺に行き、あの世で幸せにしていて欲しい亡くなった方の名前を読み上げて、…