マンホール

公開日: 意味がわかると怖い話

20130712154205

マユミという名の女子高生が学校に向かって歩いていました。

いつもと同じ時間に、いつもの道をいつもと同じ速さで歩いて行く。

すると、ふと目の前に同じ学校の制服が見えた。

近づいて行くと、それは同じクラスの生徒で、しかもいつもいじめられている女の子だ。クラス全員が彼女をイジメていた。

先生もイジメを知りながらも見て見ぬふりをしていた。

女子校なので、結構エグイことをする。無視をする時もあれば、使用済みの生理用品を机の上に置いたりなんてこともあった。

マユミちゃんも、特に彼女を憎らしいと思ったことはなかったが、自分だけイジメをしない訳にもいかず、周りに合わせて無理やり酷いことを言ったりしていた。

段々近づいて行くと、いじめられっこの彼女がとっても嬉しそうな顔をしているのが見えた。

幸せそうな笑顔で飛び跳ねている。

マユミちゃんは、その姿を不思議に思いながらも彼女のすぐ近くまで来た。

彼女はマンホールの上で跳ねていた。とっても幸せそうな顔をして、なぜか「九、九、九…」と言っている。

「何してるの?」

尋ねてみた。

しかし、彼女は返事をせずに「九、九、九…」といいながら跳ねている。

「無視してんじゃないよ」

今度は口調を強めて言った。

しかし、彼女は返事をしないで、相変わらず同じことを続けている。

今まで、特別に彼女を憎らしく思っていなかったが、嬉しそうに、しかも自分を無視したことで、何か急にとてつもなく強い感情が湧き起こってきた。

しかし、それを抑え込んで「なんで、そんなことしてんのよ?」もう一度尋ねた。

それでも、彼女は何も聞こえないみたいに嬉しそうに跳ねている。

ここにきて、マユミちゃんの中で今までと違った感情が生まれた。

ひょっとしたら、マンホールの上で数字を言いながら跳ねるということは、とっても楽しいことではないのか、そんなことを思った。

バカらしいとは考えつつも、微かにそんな思いが頭の中を過った。

複雑な思いに戸惑いを感じながらも、とにかくマンホールの上で楽しそうに跳ねる彼女の邪魔をしたくなった。

いじめられっこの彼女がなんでこんな楽しそうにしているの、なにか納得できない、そんな感情に身を任せ「ちょっと退きなさい。私がやるから」そう言って、強引に彼女を押しのけ、マンホールの上に立った。

足をわずかに曲げ、すこし腰を低くしてから思いっきり上に跳びあがる。

その瞬間、隣に押しのけられた彼女がすばやく渾身の力でマンホールの蓋を取った。

マユミちゃんは真っ直ぐマンホールの下に落ちていく。

彼女は蓋を閉めて、とっても幸せそうな顔で、再びその上でジャンプして、今度は「十、十、十…」と言い始めた。

関連記事

空き家

子供の頃に住んでいた家は、現在住んでいるところから自転車でわずか5分程度。 近所に幼馴染みも沢山いたし、自分とはもう関係ない家だという認識があまりなかった。 自分たちが引っ…

マンション(フリー写真)

B君

ある日の夕方の出来事。 僕が自分の部屋で本を読んでいると突然、窓を「バンバン!」と叩く音がした。 びっくりして振り返ると、友達のB君が興奮しながら窓を叩いていた。 「…

交通事故で亡くなった家族

警官をしている友人が数年前に体験した話。 そいつは高速道路交通警察隊に勤めているんだけど、ある日他の課の課長から呼び出されたんだって。 内容を聞くと、一週間前にあった東北自…

世界一怖いお化け屋敷

「さあさあ、ランドに来ておいて、このお化け屋敷に入らないって手はないよ!」 お化け屋敷の前でゾンビらしき恰好をした男が声を張り上げている。 ゾンビの前には数人の客が面白そう…

美術室(フリー背景素材)

眠りに落ちた美女

ある日、僕は学校の美術室の掃除当番だった。 早く終わらせて帰ろうと急いでいたら、一枚の絵が大事そうに飾られているのを見つけた。 その絵はとても綺麗な女の人の肖像画だったのだ…

トノサマバッタ

小学生の時、夏休みの宿題に昆虫採取をすることにした。まぁ、毎日アミ持って野山を駆け回って遊んでただけなんだけど、ある日すごいのを捕まえた。 体長 13.5cmのトノサマバッタ。 …

廃墟

ロアニの家

子供の頃、近くに廃墟があった。 その家は川沿いにあって、庭には井戸もある。 しかも田舎だから灯りも少ないしで、夜になるととても不気味。 必然的にその家は、幽霊が出る家…

能力

ニューヨークの地下鉄を私はよく利用する。 毎朝通勤の度に地下鉄構内で何やらぶつぶつ言ってる一人のホームレスの男がいた。 男の近くの壁に寄り掛かり、内容を盗み聞きした。 …

ノロノロ運転

俺の姉は車通勤なんだけど、いつも近道として通る市道がある。 それは河沿いの、両脇が草むらになってる細い道なんだけど、そういう道って夏の雨が降った時とか、アマガエルが大量に出てくる…

お化け屋敷(フリーイラスト)

お化け屋敷

夏休みに彼と遊園地へ行き、お化け屋敷に入った。 私はとにかく怖がりで、中が真っ暗なだけでもう恐くて震えていた。 終始、彼の腕を肘ごと抱え込み、目も瞑って俯きながら歩いた。 …