連れて行く

公開日: 洒落にならない怖い話

天国と地獄(フリー写真)

2年前、とある特別養護老人ホームで、介護職として働いていた時の話です。

そこの施設は、はっきり言って最悪でした。

何が最悪かと言うと、老人を人として扱わず、物のように扱う職員ばかりだったのです。

食事も薬やおかずをご飯に混ぜたり、入浴は水のようなお風呂で、乱暴な介護で抑制も日常茶飯事でした。

職員の給料や待遇は良かったのですが、あまりにも酷い老人さんの対応の仕方に、心ある人は我慢できず辞めて行く人も多かったです。

そのため毎日のように人は居らず、職員全員が苛々している状態で、酷い職員はそのストレス発散を老人にぶつけ、怒鳴ったりすることも度々ありました。

その酷い職員の中でも、特に酷い職員がいまして、老人さんに暴力を振るっていました。Aと呼ぶことにします。

Aの暴力はいつも酷く、顔以外の場所を叩いたり蹴るなどしていました。

Aは元ヤクザで、みんな見てみぬふりで、暴力によって怪我をしても上手く隠蔽されました。

俺もAが怖くて注意できず、今思えば情けない話です…。

Aが暴力を振るう老人の対象は、認知症や言語障害で喋れない人でした。

その中で言語障害のBさんは、Aにされた暴力の内容を、日記に書いていました。

そしてその日記を別の職員に見せて助けを求めるも、無視されました。

Bさんは身内の人も居らず、4人部屋でも周りの老人は認知症が酷く、自分が分からない状態で、AにとってBさんは最高のカモだったのです。

そんなある日、早朝にBさんは急変し、病院に行くも亡くなられました。

Bさんが亡くなった夜に、Aは急な心筋梗塞で亡くなりました。

まるで後を追うように…。

次の日、Bさんのベットを片付けていた時に、本当はいけないことなのですが、Bさんの日記を見させてもらいました。

Aからの暴力の内容や、それに対する怒りが綴られていました。

Bさんが亡くなる前の夜に書かれた、最後の日記を見てぞっとしました。

『あいつを地獄に連れて行く』

その後すぐ職場を辞め、違う仕事に転職しました。

転職してから一ヶ月後、交通事故に遭いました。全治三ヶ月。

もしかして、日記の内容を見て呪われてしまったのではないか、と思ってしまうこともありますが、これは偶然であると自分に言い聞かせています。

また最近、怖い夢を見ました。

地獄のような場所で、Bさんが笑いながらAを木刀のようなもので殴っている夢でした。

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