電脳に棲む神
公開日: 怖い話 | 死ぬ程洒落にならない怖い話
大学時代の友人の話。
そいつは結構なオタクで、今でも某SNSにガチオタな話題をバンバン日記に書くようなSE。
この前、たまたま新宿で会って「ちょっと茶でも飲もうや」ということになった。
人身事故か何かで駅が混んでいたから時間を潰したいらしい。
社会人として一年上のそいつ(以下、T)に新入社員としてのイロハを色々聞いたり、最近ハマっていることなどをお互いに話したりしていたんだが、どういう訳か神様の話になった。
俺は母方が神道、父方が仏教なので、やれ仏教は葬式が高い、神道は○○家ノ奥都城(おくつき)という墓なんだとか、そんな話をしていた。
Tは「ほうほう」と俺の雑学に頷いてたり、感心してくれたりしていたんだが、俺の話が一段落するとニヤリと笑って「俺、多分神様飼ってるかもしれん」とか言い出した。
俺「『あなたは神を信じますか?』的な流れだったらはっ倒すぞ(笑)」
T「いやいや、それじゃねぇよ(笑)」
と前置きして話してくれた。
※
エクセルって「↓」ボタンを押し続けると延々と下にカーソルが行き続けるよな?
俺、この間、家でちょっと仕事しながらネットでアニメを見てたのよ。
アニメ見るのがメインだろって? まあまあ(笑)。
んで気づかないうちにウインド切り替えて、エクセルの「↓」ボタンを押しっぱにしていたのよ。
結構時間が経ってたからもう縦列が4000とかになってやんの(笑)。
それでいきなりエクセルのウインドが黒くなってんの。そこでようやく押しっぱにしてるんに気付いたんだけどね。
何だろう、エクセルってドロップすると黒く反転するじゃん。その反転で絵が描いてあるの。
たまごっちみたいな白黒のドット絵を想像してくれると解りやすいかな。
何というか犬というか狐というか猫というか…そんな感じの顔?
ほら、俺ってかわいいもの好きじゃん(笑)。
なんか消すのが忍びなくてさ~。アニメ見終わるまで放置してたのよ。
それで、アニメ見終わってもう一度エクセルに切り替えたら、そいつ大きく口開けた感じになっててさ。
あくびしてる雰囲気よ。
かわいくね?
※
正直、この段階で俺は少し引いていた。
仕事がきついのを某SNSで読んでいたから、ついに心を病みラブプラスだけでは足りず、妄想のペットを創り出したんじゃないかと本気で思った。
ただ、話自体がなかなか面白かったので、俺は「んで、なんでそれが神様なのよ」と先を促すことにした。
以下、再びTの話。
※
いや、俺、幽霊とかよく見るからさ。
これもそっち系かなあと漠然と思ったわけよ。
それで、特に深い意味も無く、その絵の真下の空白に「3月の○日(日付は失念したが、同人誌のイベントがあったらしい)に休みください」って書いたのよ。
予定ではプロジェクトど真ん中で、有給どころか土日も休めないレベルなのにね。
そしたら次の日、何か相手先の担当が事故ったらしく、その日一日だけピンポイントで調整のため俺休み。これすごくね?
家に帰ってそのデータを開いてみたら、書いたはずの俺のお願いが消えててさ。
『あれ? 保存ミスったかなあ』とか思ってたの。
とりあえず、次のお願いは美味い酒が飲みたいって書いたの。小市民的に(笑)。あんまり大きな願いを書くと反動がありそうな気がするから。
そしたらさ、なんか父ちゃんの友人が亡くなったとかで、そのお返しが良い洋酒らしくて。
うちの両親は下戸だから、俺の方にその酒が回ってきて。うまかったなあ。
※
俺「すげーじゃん」
T「めちゃくちゃ疑ってますな(笑)」
俺「いやいや、俺は信じてますよ。今まで君のことは50回くらいしか疑ったことないすよ(笑)」
T「おい(笑)。でも今日こうやって話してるのも神様のお陰だからな」
俺「なんでだよ」
T「いや、最近大学時代のやつらとあんまり遊んでないからさ。神様に『大学の友達と会いたい』って書いたのよ。そしたら人身事故でしょ? 俺、本当ならこの時間家でネットしてるかアキバぶらついてるぜ(笑)」
そこで急に背筋が寒くなった。
こいつの願いが叶う原因って何だ?
休みが取れたのは相手の怪我。
酒が飲めたのは、身内の知人の不幸。
今日話しているのは人身事故。
これって考えれば、他人の不幸の恩恵を受けているのが原因じゃないか。
今でこそ小さな願いだが、もしこれが大きな負の願望だったら? 例えば誰かを殺したいほど憎んだとしたら?
例えばこんな世界滅んででしまえば良いと思ったら?
神様は今もTの作った電脳の世界に居る。