未来の夫

公開日: 怖い話

Pool_of_True_Divination

ある少女が、将来の結婚相手が分かると言う占いを実践してみることにした。

その占いとは、真夜中の0時、口に剃刀を咥え、水を張った洗面器の中を覗き込むと、そこに結婚相手の顔が映るというものだった。

彼女は、話に聞いた通り洗面器に水を張り、手元に剃刀を置いて時間が来るのを待った。

そして、真夜中の0時がやってきた。彼女は、剃刀を口に咥え、恐る恐る水鏡を覗き込んだ。

なんとそこには、確かに自分とは違う別の誰かの顔が浮かび上がってきている。

驚いた少女は思わず叫び声をあげてしまった。

それと同時に、口にしていた剃刀が洗面器の中に落ちてしまった。

すると、洗面器に張った水が、一瞬のうちに血のように真っ赤な色に染まった。

彼女は何がなんだか分からなくなり、頭から布団を被り、ガタガタと震えながら朝を迎えた。

朝になって洗面器の中を覗き込むと、普通の透明な水の底に剃刀が沈んでいるだけだった。

―それから数年後。

彼女はある男性と付き合うようになった。

話題が豊富で楽しく、性格も優しく、おまけに経済力もあった。

ひとつ、彼がいつも大きなマスクをしているところだけが気になったが、彼女はこの男性をどんどん好きになっていき、やがて結婚の約束をした。

そうなると、再び例のマスクの下が気になってくる。生涯の伴侶となる人の事は、よく知っておかなければならない。

彼女は、その下に何があろうと自分の気持ちが変わらない自信があった。

そんな彼女の気持ちに押され、男性もついに折れ、マスクを取って見せた。

そこには、鋭利な刃物でざっくりと切りつけられたような、見るも無残な古い傷跡が残っていた。

「ひどい。一体どうしてそんな傷が」

彼女は悲鳴にも似た疑問を男性にぶつけた。

すると男性が言った。

「お前にやられたんだよ」

関連記事

抽象画(フリー素材)

夢が現実に

最近になって気付いた不思議な事。 俺は普段眠ってもあまり夢を見ない。というか実際は見ていても忘れているんだと思う。 でも、偶に夢を覚えていたりする。しかも覚えているやつに限…

真夜中の訪問者

私には父親が生まれた時からいなくて、ずっと母親と二人暮しでした。 私がまだ母と暮らしていた17歳の頃の事です。 夜中の3時ぐらいに「ピーー」と玄関のチャイムが鳴りました。 …

封じ(長編)

アパートに帰り着くと郵便受けに手紙が入っていた。色気のない茶封筒に墨字。間違いない泰俊(やすとし)からだ。 奴からの手紙もこれで30通になる。今回少し間が空いたので心配したが元気…

カンカン(長編)

幼い頃に体験した、とても恐ろしい出来事について話します。 その当時私は小学生で、妹、姉、母親と一緒に、どこにでもあるような小さいアパートに住んでいました。 夜になったら、い…

普通の子に戻れた日

小さい頃、私は知的障碍を持っていると思われていました。 言葉や文字に対する遅れは見られませんでしたが、コミュニケーション能力が欠けているとしか思えない様子だったそうです。 …

鏡の中のナナちゃん

私は幼い頃、一人でいる事の多い子供でした。 実家は田舎の古い家で、周りには歳の近い子供は誰もいませんでした。 弟が一人いたのですが、まだ小さくかったので一緒に遊ぶという感じ…

鯉の池

けもの

俺のじいちゃん家は結構な田舎にあり、子供の頃はよく遊びに行っていた。 じいちゃんは地元の名士とでも言うのかな、土地を無駄に一杯持っていて、それの運用だけで結構稼いでいたらしい。 …

キャンプ場(フリー素材)

黒い石

大学時代のサークル活動で不思議な体験をした。 主な登場人物は俺、友人A、先輩、留学生3人(韓国、中国、オーストラリア)、友人Aの友達のアメリカ人、他は日本人のサークルメンバー。 …

田舎の風景(フリー写真)

闇をさまよう女性

ある村に伝わる不気味な伝説がある。 その名は「クギヌシ様」と呼ばれる。 どこから現れるのかは分からないが、黒い帽子をかぶった女性の姿をしており、村に悪をもたらすと言われて…

山(フリー写真)

山の物の怪

うちの爺さんは若い頃、当時では珍しいバイク乗りだった。 裕福だった両親からの何不自由ない援助のおかげで、燃費の悪い輸入物のバイクを暇さえあれば乗り回していたそうな。 ※ ある…